色をなくした世界 (ページ26)

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窓の外から見える雲のない西に登った太陽の名残りの赤さが残り、美しい夕空を作り上げている空をぼんやりと眺めた。そんな、黄昏ている彼女とは裏腹で、原はナルの方へ視線を向けた。

「……先ほどから気になっていたのですけど。あたくし、以前あなたにお会いしたことがあったかしら？」
「……いいえ。初めて、お目にかかると思いますよ」
「そう……？」

ナンパまがいなことをする原の姿に、頬を赤く染めるジョンとニヤニヤと面白そうな表情で二人を見つめる滝川。

『……ナル。もう時期、火が暮れますよ』
「ああ……。そうだな。それじゃ、二階の西端こ教室に機材を入れて、僕らも引き上げよう」
「おんや。ボウヤは泊まり込みはしないのか？」
「今日はまだ……。蓮、明日は授業が終わったらここへ。泊まるつもりでいてくれ」
『……わかりました。準備しておきます』

夕暮れの日が傾け始めたころ。旧校舎での探索は、明日となり。私たちは、それぞれ旧校舎を出て、帰宅路へ付いた。

次の日の土曜日。私は、ナルの言われたとおり。授業で使う教科書以外で、泊まり込みで必要なものを鞄へ詰め込んで学校へ登校した。

「蓮、ちょっと良いかしら」

学校へ到着するなり恵子等の素晴らしい笑顔で迫られて、ナルとのことを詳しく話す事を詰め寄られていた。

「原真砂子！？って。あのＴＶに、よく出てる？」

ミチルが、すごい剣呑な表情で私の顔を覗き込んでくる。私は、特に表情を変えることなく。持ってきていた文庫本を読みながら頷く。

『ライバル登場だね。ナルに気がある様子だったよ』
「あんた、人ごとだと思ってない？」
『所詮は、人ごとですから』

ミチルたちの話へ耳を傾けながら、ペラペラと本を読み進んでいく。ほんと、ナルのどこが良いのだろうか。たしかに、美形ではあるが。それ以外は、破滅的だ。

「せっかく、あんたがライバルじゃないって。ラッキーだと思ってたのに……。あんたほどではないにしろ……綺麗な子がライバルになるとは……」

友人の酷く落ち込んだ様子をみて、蓮は読んでいた本から顔を上げる。

『そんなに、落ち込むことなの？あの人のどこがそんなにいいの？』

ナルシストだし。はっきり言って毒舌で他者に興味がない。

「まあ、ねえ？あんたほどでは、ないけど。渋谷さんもなかなか美形で顔がいいじゃない！あんは、同性で付き合えないけど。渋谷さんは、異性！付き合える可能性は高いじゃない！」
『……そう』

今どきの高校生の考えることが分からない。すこし恐怖さえも感じる。あれは、女の皮をかぶったケダモノだよ。