色をなくした世界 (ページ25)

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いい性格をしている。

「アタシは、この場所に住んでる地霊の仕業だと思うわ」

あれだけ、原から否定されてなお。自身の意見を変えない松崎も、割と我が強いと感心してしまう。

まあ、彼女の見解は間違っているのだけれども。ここで、原の味方をして火に油を注ぐ行為はしたくなかったため、あえて口を閉ざす。

「俺は、地縛霊の方だと思うけどなあ。この校舎。昔なんか、あったんじゃねえ？んで、その霊が棲み家をなくすのを恐れて、工事を妨害してる感じかねぇ？」
「君は、どう思う？ジョン」

二人の意見を聞いたのち。ナルは、ジョンの方へ視線を向けて、彼の意見を聞く。

「ボクには、わかりまへんです。ふつう、幽霊屋敷の原因は、スピリットかゴーストですやろ？」
「スピリット……精霊か。ゴーストは、幽霊。聞いてるか、蓮？」

そうそうに、興味をなくして彼らの話から離脱していた私を、ナルの咎める声が聞こえてくる。

『……一応、聞いてます』
「ならいい」

ふんっと鼻を鳴らして向けていた視線を私からジョンへ戻すと、またジョンの話を耳を傾けた。

「原因がスピリットやったら、そこが地霊のゆかりの場所か。家にスピリット……悪魔を呼び出したことがあるとかなんやです。ゴーストが原因やったら、それは地縛霊ゆうことになります」
「地霊だと思わない？」
「地縛霊だよな！」

今まで黙っていた筈の滝川と松崎が、ジョンへ身を乗り出す。ジョンは、気まずげな表情を浮かべて吃りながらも『わっわかりまへんです』二人へ告げる。そんなジョンへ松崎は、気が削がれたようなため息を一つ溢した。

「……とにかく！祓い落とせば、いいんでしょう？アタシは、明日除霊するわよ。こんな、事件。いつまでも関わってらんないもの」

松崎は、それだけを告げて部屋を出て行ってしまった。そんな、松崎を原は呆れた様子でため息を吐いた。

「ムダですわ。霊は、居ないと言ってますのに」
『……でも、ここには色々な噂があるみたいですよ。それに、先ほどのあの方が閉じ込められたのは？』

ほんの少しだけ、悪戯心で彼女にカマをかけて見たくなった。彼女の実力が本物であるのならば、見破るはず。

「あの方の気の迷いですわ」

はっきりとした口調で、霊の存在を否定する。彼女の実力は、紛れもない本物だ。さすが、有名霊能者だ。だが、しかし。原真砂子の言うとおり。此処には、霊が存在しない。だとすれば、誰が意図的に松崎を閉じ込めたのか。まあ考えた所で、そんなことをするのは、一人しか考えられないが。今は、考えることはやめよう。どうせ、私には関係ないことだから。