色をなくした世界 (ページ24)

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あの、校長もめ。ジョンや松崎たち以外に、また人を呼んだな。

「……校長は、よほど工事をしたいらしいですね。あなたまで引っ張りだすとは」

床下の軋む音と同時で、開かれる扉の音。視線を向ければ、先ほどのモニターへ写っていた少女が静かに佇んでいた。

『知り合いですか？』
「いや、顔を知ってるだけだ。原真沙子。有名な霊媒師。口寄せがうまい。多分、日本では一流」

プライドの塊であるナルが、彼女をここまで褒めているのであれば。彼女のは本物なのだろう。

「あなたは……霊能者には、見えませんけれど」
「ゴーストハンターです。渋谷と申しますが」

しかし、あの校長も霊もいない筈の旧校舎にここまでの人間を呼ぶなんてね。そんなことを一人で考えていたとき。旧校舎内に、響き渡るほどの物音と共に悲鳴が聞こえてきた。

「なんだ、今の声は！？」

滝川が慌てた様子で実験室へ入ってくる。

「松崎さんの声とちがうやろうか」
「……あっちか」

悲鳴が聞こえてきた方へ、私たちは急いで向かう。すると、とある教室の一室で松崎が扉を叩いて、叫んでいた。

「開けて！ちょっと、開けてよ！」

閉められた扉を引き戸で開こうとするが、扉は開かない。

「おかしいな」
「かしてみろ」

滝川が変わって、扉を開こうとするがビクともしない。

「仕方ねぇな。おい、蹴破るぞ！どいてろ、綾子！」
「勝手に、呼び捨てにしないでよ！」

呼び捨てをされて怒る松崎を他所で、滝川は自前の長い足で、思いっきり扉を蹴破る。ミシッと音を立てて、扉は砂埃を撒き散らして松崎の方へ倒れ込んだ。

＊

「……なんなのよ！もう！」

滝川の手によって助けられた松崎は、怒りでご乱心のようで持っていた飲み物の缶を机へ勢いよく、テーブルへ置く。

「教室のなか見てたら、いつの間にかドアが閉まっててさ、開けようとしても開かなかったのよ」
「自分で閉めたんじゃねぇのか？」
「違うわよ！やっぱり、ここなにかいるわよ」
「……霊はいませんわ。なんの気配も感じませんもの」

松崎の言葉を真っ先に否定したのは、霊媒師の原真砂子だった。有名な霊媒師と謳われるだけあって、松崎たちと違って、よく理解している。

「……なによ。あんた」
「仮にも霊能者なのでしょ？あの程度のことで声をあげるなんて情けなくなりません？」
「小娘は黙ってなさい！アタシは、顔で売ってるエセ霊能者とはちがうのよ！」
「容姿をお褒めいただき光栄です」

怒鳴る松崎とそんな松崎を冷静で遇らう原の姿は、まるでナルみたいだ。