色をなくした世界 (ページ18)

今日:29 hit、昨日:8 hit、合計:5,917 hit

＊ページ18

学校の授業を終えた放課後。私は、教室で恵子たちと別れてから、ナルのいる旧校舎へ向かった。裏手の方は回れば、昨日と同じ場所に、ナルが所有している車が停まっている。

「……」

そっと車の方へ近寄れば、ナルは開け放した荷台に腰を降ろして、何やら調べ物をしていた。

「来たのか……」

私の存在に気がついたのか、ナルは見ていた資料から顔を上げて、こちらの方へ視線を向ける。

『それ……』
「ああ、昨日集めたデータのチェックだ」
『なにか分かりました？』
「特に異常はないな。霊がいないのか、今は姿を潜めているのか……。どちらにしても、そう危険はないだろう」

それだけを伝えて、ナルはまた資料を読み始めようとしたとき。

「へえ。いっぱしの装備じゃない」

聞き覚えのない女性の声が背後から聞こえてきた。ゆっくり、視線を背後へ向ければ、派手な格好をした女性と長身の男が佇んでいた。

「子どものオモチャにしては、高級すぎるカンジねえ？」

女性は、荷台に詰められた沢山の機材へ視線を向けた後、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。そんな、女性をナルは冷ややかな視線を向けていた。

「……あなたがたは？」
「アタシは、松崎綾子。よろしくね」
「貴女のお名前に興味はないんですが」
「随分、ナマイキじゃないボウヤ。でも、顔はいいわね」
「それは、どうも」

顔を引き攣らせる女性を気にすることなく、ナルは淡々と涼しげな様子で軽く遇らう。

「ま。顔で除霊するわけじゃないしね」
「……同業者ですか？」
「そんなものかな。アタシは巫女よ」

女性の口からでた単語を聞いて、私は首を傾げる。随分と派手な巫女も居たものだ。巫女とは言うのは、清純で気品のある人がなるものだと思っていた。過去に、何度も巫女という女性たちと会ってきたが、みんな、その言葉が似合うほどの気品さと清楚さを持っていた。