色をなくした世界 (ページ17)

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翌日のHRの時間帯。私は、昨日、怪談話に参加していた恵子たちから囲まれていた。内容は、勿論のこと。あの、ナルシストで唯我独尊のナルのことだった。

「えーっ？じゃあ、渋谷さんて転校生じゃないの！？」
『そうみたい』
「……ちょっと。谷山さん」

恵子たちと話していたとき、黒田からいきなり声を掛けられた。私は『なんのようだろう』首を傾げながら、黒田の方へ視線を向ける。

「あの人、霊能者なの？旧校舎を調べに来たって、今いってたけど」
『霊能者じゃなくて、ゴーストハンターだよ』
「ゴーストハンター？」

眉をひそめて考え込む黒田の横脇で、ミチルが『どう違うのよ』突っ込んで来るが『知らない』とだけ告げた。

「……谷山さん。あの人、紹介してくれない？」
「？」
「ホラ。私、霊能力があるじゃない？なにか、手伝えるかもしれないわ」

昨日の態度とは打って変わって、黒田はどこか嬉しげな表情を浮かべている。そんな黒田の態度を見て、私は冷めた視線を向ける。

『黒田さん、あの人にはもう会ってるでしょ？いまさら、紹介とか必要なの？そんなに、あの人に会いたいなら放課後に旧校舎に行ってみれば？』
「それは、そうだけど。でも……」

黒田は、居心地悪さから言い淀む。

『それに、あの人にはあまり関わらない方がいいと思うよ。素人と話すのも嫌いそうだしね』
「私、貴女ほど素人じゃないわよ」
「……」

幽霊も見えなくて除霊もできない人間が素人じゃないと。本当、どの口が言ってんだか。私は呆れた様子で、一つため息を溢す。

『でも、彼はプロだから。ちゃんと事務所も持ってるし……。だから、中途半端なこというと……』

そっと黒田の方へ視線を向ければ、つい先ほどまでは居たはずの黒田の姿がなかった。『あれ？』私は首を傾げて、教室内を見渡せば、黒田はいつのまにか自身の席へ戻って本を読んでいた。

「……」
「あいつ、あんなヤツなのよ。中等部の頃から有名だったんだ。アブナイって」
『……そういえば、黒田さんも恵子たちと同じ内進組だったよね』
「そ。霊感があるとかいっちゃってさ。バッカじゃないの」
「……」

何故、そこまでしてでも居ないはずの霊へこだわるのか。私は、彼女のことがよく理解できなかったし、理解しようとも思わなかった。だって所詮は、他人事だから。興味をもつほど彼女に興味もないしね。私は、黒田から視線を逸らして恵子たちと会話の中へ入った。