色をなくした世界 (ページ16)

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棚を作り初めてから暫くしてナルがこの教室へ戻って来た。だからと言って、お互いが口を開く事は無く。黙々と作業をこなして居た。テキパキと仕事を熟す私をナルは感心した様に此方を見る。

「随分と手慣れているな」
「？」
「いや、何でもない。その仕事が終わったら各教室の温度を測って来てくれ」
『分かりました』

私は拒否する事もなく頷く。素直な私をナルは満足気に頷くと、何処からか取り出したデジタル温度計を蓮へ渡す。『これの使い方を教えておく』ナルは意外にも優しく使い方を教えてくれた。

「蓮なら心配は要らないと思うが。くれぐれも壊すなよ」
「……」
「返事は？」
『……はい』

逆らってはいけない様な雰囲気に思わず返事を仕返すとナルは私の頭を優しく撫でた。

「？」

私は首を傾げてナルを見詰めているとナルは私の頭から手を離し視線を逸らす。

「早く行け」

背を向けたまま、先程とは違う無愛想な口振り。『何なの？』急な事で思考回路が回らないまま、私はナルに促されるまま教室を後にした。

各教室の温度を測り終えて。私は、温度を記したバインダーを片手に教室へ戻って来る。

『各教室の温度、測り終えました』

持って居たバインダーをナルへ手渡す。

「……異常は無いな。特に低い場所はない。強いていえば、一階の奥の部屋が低いが……。問題になるほどの温度じゃない」
「……」
「……とりあえず、一階と二階の廊下に四台。玄関に一台。暗視カメラを置いてみよう」

各部屋の温度を測り終えたばかりだと言うのに、今度はカメラの設置ときた。

「……」
「何か言いたいことでも？」
『いえ……』

ナルから降り注がれる冷たい視線を受けながしながら、私は作業へ取り掛かった。

ナルから指示された通りのカメラの配置がやっと終えた。

「もう、帰ってもいいぞ。今日の仕事はここまでだ。後は、カメラが自動的にやってくれる」
『分かりました。では、お先に失礼します』

帰る許しを得たので、ナルへ向けて軽い挨拶を告げた後、帰ろうと踵を返したとき。背後からナルの非情な声が降り注がれた。

「明日の放課後、車の所に」
『……分かりました』

『では、また明日』それだけを告げて、私はナルの方へ一度も振り返ることなく旧校舎を後にした。