色をなくした世界 (ページ13)

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蓮から期待していた回答が得られたのか渋谷は怪し気な笑顔を浮かべた。

『……それで、渋谷さんは何のお仕事をしていらしゃるんですか？』
「……ゴーストハント。直訳をすれば、幽霊退治……かな。校長の依頼で旧校舎の調査にきた。『渋谷サイキック・リサーナ』の者だ」
「……」
「心霊現象の調査事務所。その僕は所長」

随分とお若い所長だ。それが、彼を見た第一印象だった。私は、私を置いて颯爽と歩き去って行く渋谷の後ろ姿を観察する様に眺めた。

これから助手の手伝いをするに当たって、渋谷から旧校舎の事について話を聞かさて居た。

「……1週間前、此処の校長が依頼に来たんだ。取り壊し工事をしようとすると事故が起こる旧校舎を調査して欲しいと」

ああ、ミチルが怪談で話して居た旧校舎の噂の話か。1人納得してしまう。

『……昨日、私達の前に現れたのは旧校舎の話を詳しく聞きたくて、怪談に参加しようと思ったんですか？」
「……話が早くて助かる。そうだ。生徒達の間の噂を集めたかったんだ。で？話は出たか？」
『はい。昨日、ミチルが話してくれました。ええと……」
「まった」

メモ用紙に昨日言われた事を書こうとした時、渋谷から書くのを止められた。そして、私を見詰めたまま顎に手を当てて何かを考え込んで居る。私は、そんな渋谷の姿に首をを傾げる。

「昨日、君が聞いた旧校舎の話を全て話し終えた後、そのメモ用紙をくれないか？」
『なぜ？』
「貴重な情報源として取って置きたい」
『……分かりました』

メモ用紙を渡す事を了承して、私は昨日ミチルから聞いた旧校舎の話を書いては破って渋谷へと渡した。そして、全てを話し終えた頃には、渋谷は渡されたメモ用紙を手で持ったまま、また何かを考え始めた。

「……旧校舎が使われていた間、死人が多かったのは真実」
「……」
「……旧校舎が校舎として使用されていた18年前までは、ほぼ1年に1人から2人の割合で死人が出てる。旧校舎西側の取り壊し工場の際、屋根が落ちるという事故があったのも本当だ。ただし、作業員が死んだという真実はない。怪我人は五人ばかり出たが、原因は業務上のミス。工事は当初の予定どおり三分の一を取り壊して終了。その後……今から6年前だが旧校舎内で子供の死体が見つかって居る。近所に住む7歳の女の子だ。……これは、営利目的の誘拐だった。犯人は1ヶ月後に逮捕されている。……自殺した教師も確かに居るが、これはノイローゼが原因。遺書があったんだ」