壊れていたのは…… (ページ34)

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所で話は変わるけれども、田中は生まれた頃から鳥が大好きだった。愛読して居た鳥の図鑑は、表紙がヨレヨレになり、ページは読み過ぎて擦り切れる程読んだ。

「珍しい鳥なんだね、君は……」

ドードーの消しゴムを片手に、愛読していた図鑑を読んでドードーが絶滅危惧種である事を知った。そんな、消しゴムを自身は持って居るのだ。ドードーの事を調べて行くに連れて、田中の中に一つの欲求が目覚める。其れは、一度でも良いから鳥を飼ってみたいと言う小さな欲望だった。見るだけだと言われて、父に連れて行って貰ったペットショップで、結局。父からグレーのオスのオカメインコを買って貰った。名前はまる。

真っ赤なほっぺのような赤い模様と可愛らしいく鳴くオカメインコを見て、田中はじわじわと喜びが浮かび上がってきた。そんな、鳥好きな田中だったが、ドードーの物珍しさだけでは到底、佐藤に敵わない事は理解出来ていた。

けれども、佐藤には負けたく無いプライドが有り、一周回ってコレ！見たいな何食わぬ顔で、唯の消しゴムを使ったりもした。後は、美大では消しゴム代わりに食パンを使ってるんだぞ、と嘘で塗り固められた事を話して見てもそんな小手先が通用する訳もなく。

毎日のように敗北感による苦痛を味わっていた。そんな時、偶然見つけたのがネットオークションに出品されていた呑楽消しゴムを見つけた。直ぐに、これだと思った。この、消しゴムを手に入れれば、もう敗北感による苦痛を感じなくて済む。世界に一つだけのレアリティーの消しゴム。どうしても、手に入れたくて出品者の情報を調べた。

「でぃっちいちいち……？」

其処からの田中の行動は早かった。夜遅く、寝静まる両親の寝室を物音を立てずに入室し、父のスーツのポケットからサイフを取り出す。そして、クレジットカードを抜き出した。ネットオークションの品を入札するには、どうしてもクレジットカードが必要だった。父の財布からカードを抜き取る事は、罪悪感を覚えて居たし、悪い事も理解して居た。けれども、一度芽生えた欲望は止まらなかった。クレジットカードに記載された番号を紙へ書き写し、そっと元の場所に戻して、その日は眠りに着いた。

相変わらず佐藤は、物珍しい品をクラスメイトに見せびらかし自慢して居た。

「これはね、パパがドバイに行った時に買ってくれたの」
「スゲーッ」
「ふん、今に見たろ」自慢気に話す佐藤を田中は鼻で笑った。

兄が帰ってくるまでの間、内緒で兄の部屋に入り、パソコンを触って居た。