壊れていたのは…… (ページ33)

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田中革命ページ33

街中の人々が奇異の目で見る中、一人のピューマは気にする事なく、自身が執着するものを必死で追いかけていた。

「おい！あんた何がしたいねん！」

大声を上げて咎める猪を無視して必死で走った。

話は4年前まで遡る。田中一。当時20歳。会社員のピューマ。4年前の当時、田中は初の就職先であるゲーム会に勤めて居た。仕事の休憩中、田中はスマホゲームをしながらふっと思う。正直、今のゲームはあまり好きじゃないと。

昔のゲームはもう少し面白くて自信をワクワクさせてくれたのに、今のゲームにはその要素が全くない。ゲームとは、一種の現実逃避だ。現実から避難する筈のゲームが、今では仲間と共にアイテムを取ったりチームを組んだりと仲間居れば有利だったり、金や時間があれば有料だったりする。それは、もう現実逃避では無くてまるで現実だ。

話は更に遡って、小学生の頃。クラスで、消しゴム集めが瞬間的に流行ってた時期があった。とういうのも、自身のクラスの担当を務めていた担任が貧富の差に煩く、あらゆる持ち物を均一化し、平均を逸脱しない様に生徒達を厳しく指導して居た。そんな、厳しい目を掻い潜れる唯一の逃げ道が消しゴム。今思えば、馬鹿らしい事だと気づける。

けれども、小学生の頃の自分はそれに気付かなくて、どれだけの数の消しゴムを集められるか如何にレアな消しゴムを手に入れれるかを考えて居た。それだけで、クラスのヒエラルキーを支配出来たから。って言うのは、大袈裟ではっきり言えば嘘だ。消しゴムなんかでクラスの陽気な人達見たいには慣れない。いつだって、クラスの中心にいる陽気な人達は、分かりやすく言えば運動神経の良い人だったり、勉強が出来て頭が良い人、絵が上手い人、面白い人。

何れのどれか一つを持つ者だけがクラスの中心になれるのだ。そうでは無い者達が最後に縋るのが消しゴム集めだった。いや、これも大袈裟だし、なんなら嘘だ。こんな事を真剣にやって居たのはクラスでたった2人だけ。俺と佐藤という奴。この佐藤という奴が厄介だった。親の出張が多い代わり小遣いを沢山貰って居たし、なんなら親からは出張先のお土産としてご当地でしか手に入らない消しゴムをねだって居たりした。

何故、田中と佐藤が不毛な争いに参戦して居たかと言うと、珍しい消しゴムを一つだけ持って居たから。その消しゴムは、親戚の海外旅行のお土産に貰った、ドードーの消しゴム。