壊れていたのは…… (ページ32)

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仕事をして居たと嘘を付き、慌てて遅れた理由をツギハギだらけで答える。

「あのー。えっと……」
「フフ。思ったより、素敵な人で安心しました。濡れちゃって……可哀想……」

持って居た花柄のハンカチで柿花の雨に濡れた顔を優しく拭き取る。

「何処かでお茶でも飲めるところ入りましょうか」
「そっ、そうだね！ダージリンの美味しそうなお店知ってるんだけど、ちょっとこの辺、土地勘ないからな……」
「それなら、近くにドトールありましたよ。そこ行きましょ」

差した傘を柿花へそっと傾ける。柿花は頬を赤く染めて、優しい表情と笑顔で二つ返事で首を縦に頷かせた。

「えへへ、ごめんね」

二人で小さな傘に濡れないよう寄り添い合いながら、歩いてカフェへ向かった。そんな二人の様子を眺める二人の大柄な男の姿。
柿花は知らなかった。所詮、嘘で塗り固めて手に入れた幸せなど長くは続かない事。蓮が言って居た言葉が嘘では無かったこと。今の幸せを感じて居る柿花は何一つ気付かなかった。

7/16 付け焼き刃に御用心完。