壊れていたのは…… (ページ30)

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他人に興味が無かった筈の彼女が誰かを気にする事なんて珍しくもあり、其れでいて嬉しくもあり柿花は更に、鬱陶しく蓮へ絡む。

「いつの間にか落ちて居る……そういうもんさ。恋って」
「……」
「えっ、もう何〜？俺の相手が見たいって！？」
「何も言ってないよ」

「もう、しょうがないな」だらしなく顔を緩ませる柿花を冷めた目線で見詰める。全く、人の話を聞いて無いな。

「ほら！」

写真の中に写されて居たのは、まだ若い三毛猫の写真。どう見ても未成年者。

「……未成年？」
「まだ、18歳。メールのやり取りしかしてないけど、とってもフィーリングが会うんだ」
「やっぱり、未成年。その人、婚活サイトで知り合ったの？」
「そうだよ」
「……」
「蓮の言いたい事は分かるよ。こんな子存在してないじゃないかと思ってんだろ。でも、ほら。ちゃんと存在するんだ」

「柿ちゃんさん、お仕事頑張って」如何にも女子高校生らしい文体とハートマークの記号と純粋そうな笑顔。けれども、私は何故か違和感を拭えないで居た。

「あっ、ママ。おかわり！」
「はいはい」

グラスの中の無くなったお酒を注文する柿花を尻目で、蓮静かにメモ用紙に言葉を書き綴る。

「……存在を疑ってる訳じゃないよ。ただ……騙されて居るんじゃないかって」

柿花が、本当に騙されて無くて、その子がちゃんと彼へ好意を向けて居るならば、私は何にも言わない。けれども、果たして。こんな若くて可愛い女の子が遥か歳上の……それこそ、会った事もない柿花へ好意を抱くだろうか。

「妬んでのか？」
「柿花。妬んでるから、言ってる訳じゃないよ。冷静に考えて見てよ。さっき、貴方が言ったんだ。''俺達は婚活市場じゃ需要ない''って」
「……っ。だから、フィーリングが！」

柿花は声を荒げて怒りを露わにする。

「会った事も無いのに。フィーリングも何も無いよ」
「メールのやり取りしてる！見てみろよ、ほら！こんなに！」

二人のやり取りであるトーク欄の画面を見せる柿花。トーク欄には、柿花から少女へ食事を誘うメッセージと高いお店のURLが送られて居た。

「……ちょっと。貴方のプロフィールを見せて」
「っ！や、やだね」

明らかに動揺する柿花を蓮は、鋭い視線を向ける。柿花は、何かを隠してる。柿花の経済では、夜景の良い高いホテルでの食事は出来ない筈。

「良いから、見せてみて」
「やめろよ！」

頑としてスマホを手放さない柿花を蓮は、無理矢理な感じがしたが、力一杯にスマホを取り上げた。騒ぐ、柿花を軽く抑えつけてプロフィールを読み上げる。