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「どうしました？」
被って居たた帽子を上に上げて、此方を覗き込む大門兄の姿。ドブは、弟の方では無くて兄の方だと分かるとホッと息を吐く。
「……見れば分かるでしょう。強盗だよ。拳銃持ってるの」
「静かにしろ。近所迷惑だ」
「所持品検査してくれない？」
「何か、可笑しいんだよ。この運転手」
「そのようだな」
ドブの言葉に同意をする堅志郎。
「……」
「取り敢えず、SOS表示切って貰える？ 紛らわしいから。えー。新宿4から中央……タクシーのSOS誤表示……」
無線でSOSが誤表示だった事を告げながら去っていく堅志郎の背後姿を見て、蓮は「もう、暫く堅志郎と話してやらない」と胸中で硬く決意をした。
「さてと」
ガッと強い衝撃が運転先へ走る。ドブは片足を運転席へ乗せると、先程の焦っていた様子が嘘かの様に余裕気な表情を浮かべて居た。
「新宿向かってくれ」
ドブを追い出す為、頼みの綱であった警察が去って行った今。ドブの指示に従うしか方法が無くなった蓮は、渋々とタクシーを発進させた。
「中々の賭けに出たじゃねえか。SOS表示したタクシーで俺との話を引き延ばし、わざわざ挑発して銃口を向けさせたのか？ 後ろにいたパトカーに、それを見せるつもりで……本当に、俺が撃ってたらどうするんだ」
「別に……死んでも良いし」
死ねるのならば本望だ。けれども、私は……。
「死ぬのが怖くないのか。死んでも良い奴が妙な正義感出すんじゃねーよ」
「怖くないよ。死ぬ事は怖くない。それに……」
「それに？」
「……何でもない。けど、面倒な事に巻き込まれるくらいなら死んだ方がマシ」
「……分かったよ。小戸川ちゃん。お前を脅しても言う事を聞かないのは、よおーく分かった」
運転席の座席に乗せて居た足を下ろして、ドブは前屈みになると蓮の耳元で甘い声音で囁いた。
「お前は、何で動くんだろうなあ……。金も執着無さそうだし……そうだ！ 仲間に危害を加えよう。誰にしようかなあ……あ！ お友達、柿花……って言ったけ」
「柿花ね……あの人も死んだ方がマシかもね」
「冷たいなあ。蓮ちゃんは。でも、ちょっと動揺してたよ。本当は虚勢張ってるんだね。誰にしようか……。柿花……タエ子……」
「……」
「白川」
聞き覚えのある名前がドブの口から出た瞬間、ドブの方へ自然と振り返って居た。
「ここかあ。蓮ちゃんのウィークポイント」
悪人顔で笑うドブを蓮は、車の運転を辞めてドブの顔を引っ捕まえた。
「白川さんに、手出したら許さないから」
「ッ……」
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作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2023年6月11日 23時
