付け焼き刃に御用心 ページ22
私に向けられた拳銃と冷めた笑顔を浮かべるゲラダヒヒ。
「小戸川ちゃん、ドライブしよ」
甘い声で囁くドブに、蓮は怯える事もなく表情を変える事なく冷静にメモ用紙をドブへ見せる。
「良いけど……ただ、ちゃんとお金は払ってね」
「うーん。良いお話が聞けたら払おっかな」
「良いから、車を出せよ。でないと……」拳銃を向けられて脅される為、蓮は渋々とタクシーを走り出した。
「……話って何？ それよりもその玩具が気になるんだけど」
「オモチャかなあ？ ホンモノかなあ？」
甘い声音で蓮の頬に銃を突き付けるドブ。
「ねえ。小戸川ちゃん。練馬の女子高校生乗せたらしいじゃん」
「そうみたいだね。生憎、ドライブレコーダーのデータは大門兄に渡したよ」
「ああ。データは俺が持ってる」
やはり堅志郎とドブは繋がって居たか。彼が練馬の女子高校生失踪事件を私に尋ねて来ると言う事は、彼が慕うボスと何らかの関わりがあるのだろう。
「……」
「其処で二つ程頼みがある。一つは口止め。それと、もう一つは協力して欲しい」
「口止めなら、すでに大門兄からされてるよ。警察に行ったら拳銃持った指名手配犯がお前を殺しに来るって。実際には、貴方がきたし」
「警察だけじゃ無い。誰にもだ。ドラレコのデータは無くしたって言え」
「誰にもって誰に？」
「誰も彼まだ」
「……で、強力って何」
「今後、ドラレコのデータを欲しがる奴がいたら俺に教えて欲しい」
「断るって言ったら？」
「殺す」
淡々と告げられた脅しの一言。蓮は、ルームミラー越しからドブの表情を窺う。無表情で冷淡な目付き。だが、その瞳の奥は。
「……」
私は、ドブに気づかれない様に運転席の下に備えられた電光掲示板にSOSの表示を出せるスイッチを押した。
「……何で、貴方がそんなに必死にその子を探すの？」
「お前は知らなくて良い」
知る必要が無いとバッサリと切り捨てられる。けれども、私は知らぬ振りをして、ドブを納得させる様な言葉を次々とメモ用紙に書く。
「何も知らないのに協力は出来ないよ。それに、こっちもある程度状況を把握しておかないと誰に対して何を口止めされているのか分からない」
「……分かった。まず、俺のボスが練馬の女子高校生を捜している」
「何故？」
「ボスの同級生の娘さんだから」
人を散々苦しめて来たあの男がたった一人の女子高校生を探す為に、部下を使うとは。其処まで大切な友人なのだろう。
「警察は？」
「警察は表向き、俺を疑ってる」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クジラ大好きマン | 作成日時：2023年6月11日 23時
