壊れていたのは…… (ページ18)

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「違うんですよ！ミステリーキッスのCD買うのに使うんすよ」
「ミステリーキッス？」
「運転手さん、知らないんですか！？」

其処からミステリーキッスの魅力に付いて永遠と語る今井。蓮は、今井の話を片隅で適当に相槌を打って受け流す。

「二階堂ルイの圧倒的なオーラ！ジャニスジョプリンを彷彿とさせる様な歌唱力！天性のアイドル性とは裏腹に溢れ出る剥き出しの向上心！そして、三矢ユキの身体能力の高さを裏付ける様な高次元のダンス！さらに市村しほの等身大の控えめさ！三者三様、キャラが立ってて、まさに三位一体だったんですよ！」
「よく喋るってのもあるけど、キャラが尻すぼみに弱っていくね」
「なんたって、俺は二階堂推しだもの！二階堂応援アカウント作るくらい！」
「……」
「でね、今日がデビューCDの予約イベントだったんですけど、CDにチェキ券が付いてて買えば買うだけルイたんとチェキが撮れちゃうんですよ！」
「じゃあ百歩譲って、その宝くじ買うお金でCD買えば……」
「何言ってんすか！買えてもCD一枚じゃ無いですか！それなら、宝くじドンと当てて二階堂ルイを独り占めしたいんすよ！」

カッと目を開き食い掛かり、座席を揺らす。

「うっすい確率に賭けてるのは分かったから落ち着いて」

運転して危ないからと大人しく座る様伝えれば、案外素直な物で座席を揺らしていた手を止めて、大人しく席へ座った。

「運転手さんは、運良い方っすか？運を転がす手って書いて運転手ですもんね。ちょー運良さそうだ」
「……昔。死んでも(・・・・)可笑しくない事故で助かったから運良いのかもね」
「運良かったら事故んないでしょ」
「それもそうね」

可笑しく笑う今井を他所に、私は新宿へ着いた事を告げる。

「新宿ついたけど、この辺で大丈夫？」
「オッケーです！ 2000円でさーせん！」

反省した様子もなく軽い謝罪言葉。今井から2000円を受け取って、後部座席のドアを開けて下車するのを待っていた時、今井がふっととある事を聞いて来た。

「一応、運の良い運転手さんの好きな数字7つ聞いて良いっすか？ 37まで」

好きな数字を聞いて来た今井を尻目で、ああ宝くじの数字を聞きたいのかと理解した蓮は、悟られない様、今回当たる宝くじの数字をメモ用紙へ書いて行く。

「……2番、10番、12番。18番と20番。そして、32番と33番」

数字を並べて、そして書き終えたメモ用紙を今井の方へ渡す。渡されたメモ用紙を見て、今井は目を輝かせる。