壊れていたのは…… (ページ15)

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「嘘だろ。白川さんと連絡交換……？」
「なんか、流れでそうなって……」
「マジかよ。それで、白川さんと連絡交換してどうなったんだ？まさか、それだけじゃないだろ？」
「……休みの日に、食事に誘われた」
「……？。？？？」

瞬き一つせず、此方を見詰めて来る柿花。その目は、まだ何かを隠しているだろうと包み隠さず全てを話せと物語っていた。蓮は、少し気まずくなりながらも、白川さんがタクシーに乗って来た日の事、包み隠さず柿花に話した。

　＊

一言の会話がない車内の中、ラジオ越しから聞こえて来る漫才コンビの雑談を片隅で蓮は車を運転していた。白川さんも白川さんで蓮と会話をする事なく、雨が降り注ぐ街並みをハイライトの無い瞳で飽きもせずにじっと眺めていた。

「ねえ。もうしかして、気まずいの？」
「……何で？」
「ラジオ、流しっぱなしだから」
「ああ……。別に気まずくは無いよ。毎週聞いてるから習慣付いて、聞いてただけ」
「ふーん」

聞いといて興味も無さげな態度。病院内で会う時の白川さんとはまるで別人だ。病院で見せる何時もの笑顔は無く、何だか態度も無愛想だ。

「ねえ。小戸川さんは、何で眠れないの？」

唐突な質問と何かを探る様な視線。

「……眠り方を忘れたの。どうやって、眠ってたかなって」
「小戸川さん、いい事を教えてあげよっか。羊を数えるの」
「それって、昔からある方法だよね」

さも、自分が発見しましたという様な口振りをする白川さん。其処からは、先程まで沈黙していたのが嘘の様にどうでも良い会話を二人で続けた。

「ねえ。小戸川さんは、好きな人いないの？」
「……居ないよ」

嘘。本当は居る。世界で1番愛した人が居る。もう2度と会えない人だけれども。

「勿体無い。恋すると人生楽しくなるよ」
「そんな、年頃でも無いよ」
「何言ってんの？まだ、若いじゃん。これからだって」
「………」

無言で運転を続ける私を白川さんは気にする事無く、溜息を吐いて座席に身を沈める。

「あーあ。私ももう28だし。しっかりしないとなー」
「……まだ、28でしょう。君もそのうち分かるよ。本当に歳をとると……色々考えては、後悔する場面が出てくる」
「つまり？」

どんなに後悔がない人生を歩んできても人は死を直前にすると後悔する生き物だ。あの時こうしていれば……と考えては悔やんで後悔をする。本当に、後悔のない人生を歩むのは無理なのかも知れない。けれども……。

「若い内にあまり後悔のない人生を歩めってこと」