壊れていたのは…… (ページ14)

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長い夜の過ごし方ページ14

降り注ぐ雨が止む事を知らず振り続ける中、蓮はタクシー専用の乗り場に車を停車させて、淀んだ空を眺めて居た。コンコンと小さく窓を叩くノック音。音が聞こえる方へ視線を向ければ、見覚えのある綺麗なアルパカ。私は、後部座席の自動ドアを開けて、乗車する様に誘導して乗客がタクシーに乗った事を確認すると、後部座席のドアを閉めた。

「……勤務終わりにタクシー乗るって、ナースって儲かるんだね」

後部座席に、美しく長い品やかな足を組んで座るアルパカ……白川さんへ告げれば、にっこりと白川さんは美しい笑みを浮かべた。

「私のこと覚えてるんだ」
「この辺でアルパカは貴女しかいないから」
「……フフ」
「？何かおかしい事言った？」
「ジェネレーションギャップアピールいらねえんだよ」
「……」

優しい笑みを貼り付けながらも何処か冷めた視線を向ける白川さん。何か、気に障らない事言ってしまったのだろうか。
　

白川が乗り込んだタクシーが発進するのを見届けた一人のゲラダヒヒの姿があった。黒い傘を差して、ポケットに仕舞い込んでいた封筒を素早く取り出し、目の前から白い傘を差したミーヤキャットとすれ違いざまに封筒を渡し、誰からもバレずに録画データを受け取る。そして、お互いが知らぬ振りで街中の人混みへと消えて居た。

久方振りに柿花から連絡があり、何時も行っている銭湯サウナへ行かないかと誘われて、やって来た銭湯サウナ。私は、サウナには入らずに、ささっと銭湯で身を清めて溜まった疲れを癒すべく、マッサージチェアへ身を沈めて居た。

「よっ。蓮、待ったか？」

男風呂から出て来た柿花がどっかりと音を立てて、隣のマッサージチェアへ座った。

「アイス食うか?」
「食べる」

持っていたアイスを蓮へ渡して、柿花はもう一つ持っていたアイスの封を開けてアイスを頬張る。私も柿花と同じ様に、アイスの封を開けてアイスを一口齧る。程よい甘さのバニラの味が口一杯に広がる。

「美味いか？」
「……」

コクリと一つ頷けば、柿花は「そうか」優しく笑って、私の頭を撫でた。

「いやー。しかし、蓮とは久しぶりに会うな。元気してたか？」
「……久しぶりに会ったって、この前会ったばかりだけど」
「そうか？それで、友達は出来たのか？」

まるで何年も会っていない親戚の様な態度で接する柿花を鬱陶しく感じながらも嫌な表情を見せる事なく柿花との会話を続けていた。そして、会話を続けていく中で蓮は、ふっと白川さんとのやり取りを思い出し、白川さんと成り行きで連絡を交換した事を柿花へ告げる。