82 †God knows† ページ22
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A「ねぇ、翔ちゃん」
“Eden of Hell”まで送ってもらう車の中、俺は翔ちゃんに問いかけた。
ん? とこちらを向いた翔ちゃんに、気になっていたことを思い切って聞こうと思ったんだ。
A「持ってるものが多いって、どういうこと?」
S「あー……俺も詳しくは分からないんだけどさ。入った初日に旭さんに言われたんだ。
“俺らみたいな奴になるには、持ってるものが少ない方がいい”って」
A「ふぅん……んで、今は持ってるもの、多いんだ」
俺がそう言うと、彼は少しだけ体を近づけてきた。
そして、俺の顔をしたから覗くように見る。
翔ちゃんはわざとらしい溜息をついた。
S「和也に潤、楽園で出会ったお客さん。雅紀と過ごした時間……そして何より、雅紀。
あの人らの元にいた時になかったものが、今は手に入ってる」
ふふ、と笑って翔ちゃんは続けた。
S「抱えきれないくらいの幸せを持ってるから、もうあの世界には行けないの」
A「それがなくなったら……また、戻っちゃうかもしれないの?」
S「……雅紀がいる限り、俺は戻れないよ」
翔ちゃんの声が、震える。
窓の外の景色を見ながら、翔ちゃんはいつもより饒舌だ。
S「きっと、神様は知ってたんだよ……俺らが出会って、今こうしていられること」
A「 だから俺らにちょっと辛いことやらせてたのかな?」
S「ふふ、多分ね。これからの喜びが増すように……とか」
流れる街灯の灯りが、どんどん流れて行く。
俺の肩におかれた翔ちゃんの頭が、そっと離れた。
いつか見たような、憂いを帯びた瞳。
ゆらゆらゆれて、俺と合うと途端に凛とする。
S「いつまでこうしていられるが分からない……だけど、俺は今、世界一幸せ」
「俺もだよ」と答える代わりに、翔ちゃんを強く抱きしめた。
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END*
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作者名：CH!KA､
| 作成日時：2013年11月15日 23時
