76 †Spectatorｰtwo† ページ16
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S「貴方には感謝してる。旭さんにもね。でもさ、捨てられちゃうとその恩って忘れるんですよ」
O「捨てられて、社長のところでいい暮らしができると思ったんだけどなぁ……」
S「ふん、白々しい……まぁ? 予想通り、大金にはなりましたけど」
O「お前のおかげでさらに組は潤った。今じゃここらで負けなしだよ」
強がりなのか、それとも本当に余裕なのか。
智さんは豪快に笑って見せた。
そして、すっと真剣な顔に戻って雅紀と旭さんの勝負を眺める。
一回目は、お互い同じ数だったみたいだ。
笑って雅紀の顔を見る旭さんと、あからさまに安堵した表情を見せる雅紀。
何なんだよ、もう気持ちが追い込まれてんじゃん。
あいつにしちゃあ気負いすぎなところがある。
俺がかかってるなんて思わずに、ただ勝負に勝つことさえ考えればいいのに……
彼を追い込んでいるのが自分自身だって、分かった上でだ。
そして、智さんの興味が俺にないことも踏まえたうえで、俺は……
S「雅紀……? 俺のことなんて、いいからさ。勝負つけちゃってよ……」
A「翔ちゃん? なに、言ってんの……?」
S「勝っても負けてもさ、俺の運命は一緒なの……だから、雅紀をそれに巻き込みたくない」
A「やだよ、俺っ」
こう言えば、彼は俺を助けてくれる。
雅紀が馬鹿正直でよかった、って心底思う。
言葉の含みを読み取れない雅紀だからこそ、俺のこの芝居が活きるんだ。
S「俺を……捨てて、いいよ」
見開かれた目から、涙が零れていた。
俺の偽物の涙は、雅紀みたいに……綺麗かな?
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作者名：CH!KA､
| 作成日時：2013年11月15日 23時
