71 †Ties† ページ11
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A「俺は、翔ちゃんと出会ってさ。後悔なんてしてないんだよ?」
S「そんなの、嘘……だって、迷惑ばっかりかけてんのに」
A「聞いて? 俺は、一つも迷惑だなんて思ってない。
翔ちゃんと出会わなきゃ出来なかったことだって沢山ある。だから……」
頬を押さえて、涙ぐむ彼を思い切り抱きしめた。
もうこれ以上……自分を傷つけて欲しくない。
自分の存在を否定して欲しくない。
A「俺は、翔ちゃんに出会えて幸せだよ」
ずるいって、翔ちゃんはそう言った。
確かに俺は……ずるいと思う。
一方的に自分の気持ちを伝えて、勝手に抱きしめて。
翔ちゃんの答えを左右するようなこと言っちゃって。
S「俺だって、本心じゃないよ……? でも、雅紀が本当は嫌がってたらって思ったら……」
その場に膝を折って、翔ちゃんは俺の腹に顔を押し付けてくる。
揺れた吐息が、その先の言葉を紡ごうとして、また震える。
……泣き顔なんて、もう何回も見せてるのに。
今更強がって涙を隠しても、遅いよ?
A「不安にさせて、ごめんね」
S「……いいの、俺が勝手に不安になってたんだから」
そうやって笑うのは、いつぶりだろう。
壁の華であった頃と同じように笑って、翔ちゃんは立ち上がる。
S「雅紀、俺に……考えがある」
すっかり“いつも”通りのその顔に、鳥肌が立つのが分かった。
始めてであった時と同じように、鼓動が早くなる。
この感覚も、ご無沙汰な気がする。
こんな状況なのに、妙にワクワクしている自分がいた。
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作者名：CH!KA､
| 作成日時：2013年11月15日 23時
