心には距離なんか / T.Tada * ページ37
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「あ、多田さん」
『…おぉ、Aか！久しぶりやな』
「ねー、久しぶり。元気してました？」
『元気元気。Aは？』
「まぁまぁすね」
『はは、そうか』
「隣いいですか？」
『おう、ええよ』
こうして漫才劇場のソファでAと話すのも、何年ぶりになるだろう。
俺たちが東京に来てから、Aと会うことはすっかり少なくなった。
たまに会ったら飲みに行くぐらいには仲が良くて、その度に俺は、Aも東京に来たらええのに、と言ってみる。そしてその度、Aは決まって いやぁ、無理ですよ、と自虐的に笑う。
その実力があれば、東京でも十分やっていけると思う。
でも俺がAに東京を勧めるのは、活動の幅を広げるためとか、新たな環境で力をつけるためとか、そんなことじゃなくて、もっと自分勝手な理由からだった。
『あんま会えんで寂しいわ』
「何なんですか、自分で東京行くって決めといて笑」
『そうやけどな』
「そんなん言ったら私の方が寂しいですよー」
『…思ってなさそうやな』
「思ってないです笑」
『おい笑』
子どもっぽく笑うAを見て、胸がグッとなる。東京に行くと決めたとき、Aと離れてしまうことだけが心残りだった。
「たまにはこうやって大阪来てくださいね」
『うん、また来るわ』
「いつでも待ってるんで」
すらすらと社交辞令じみたことを並べる様子は、いかにも世渡り上手といった感じで、どうせ他の男芸人にも同じようなことを言っているのだろうな、と思う。そんなずる賢いところはちょっと腹が立つけど、そこもまたかわいらしいと思ってしまうぐらいには好きだった。
「あ、多田さん、あの」
『ん？』
「あー、お先に、失礼します」
『帰るん？』
「はい、もう出番終わったんで」
『気をつけてな』
手を振ってみると、Aはにこやかに振り返してくれた。次に会えるのは一体いつになるのだろうか。
Aに会う度、心のどこかで 大阪に戻りたい、と思ってしまう自分がいる。
『…あれ、』
Aが座っていた辺りで、何かが光っている。
その光を探ってみると、拾い上げたそれはピアスだった。
忘れ物かあ。仕方ない。届けてやるか。
次に会えるのはいつだろう、なんて考えていたのに、こんなにも早く“会いに行く理由”が生まれるなんて。
あの後ろ姿を頭に浮かべて、思わず口角が上がった。
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ぐり - 初めまして！雰囲気が好きですべて一気読みさせてもらいました🥹マユリカ阪本さんのお話読みたいです。時間がありましたらぜひお願いします(^^)v (5月11日 13時) (
レス) id: 0e2050f731 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - いつもにやにやしながら読ませて頂いてます！ リクエストなのですが、ヤーレンズの出井さんのお話お願いできませんでしょうか？？哀さんのペースで大丈夫なのでよろしくお願い致します！ (2023年4月22日 22時) (レス) id: 6bae7fb429 (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆん - 哀さん» こちらこそありがとうございました！素敵なお話でした✨ (2023年4月9日 11時) (レス) @page42 id: 4336aaf71d (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - まゆゆんさん» リクエストをいただいていた多田さんのお話を公開しました。コメントを読み違えてしまい、彼女設定ではありません。申し訳ございません🙇🏻♂️リクエストありがとうございました！ (2023年4月9日 9時) (レス) id: 8ce96fbb9e (このIDを非表示/違反報告)
P-398(プロフ) - リクエストです！D.Shibaさんの恋人だった主人公が事故で亡くなってしまう話を（死ネタ不可でなければ）お願いします！ (2023年3月17日 17時) (レス) id: 2cc94b219c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：哀 | 作成日時：2022年5月5日 10時
