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カスタードの夜 / K.Takahira ページ5

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玄関からガチャガチャと鍵を回す音が聞こえて、もしかしたら不審者かな、この辺割と物騒だし、なんて思いながらちょっと身構えていたのに、現れたのはよく見覚えのある男で拍子抜けした。



「アイスとシュークリームどっちがいいですか?」


『…直樹くんか』


「久しぶりですね」
『たしかに、そうかも』


久しぶりに顔を突き合わせても、彼の気だるそうな目は変わっていなかった。なんか、髪型はすぐ変わるけど。


「アイスとシュークリーム、どっちがいいですか?」


嬉しそうに同じ質問を繰り返す。


『じゃあ、シュークリームで』
「え、マジで?」
『え、何で?』
「うわー、あ、いや、はい」
『え、なに』
「いや、シュークリーム選ぶと思ってなかったから」
『食べたかった?』
「…別に」
『食べたかったんじゃん笑』
「いや全然、ほんとに、食べてください」
『いいよ、はんぶんこしようよ』
「シュークリームをはんぶんこするの相当難しいですよ」
『私ならできるよ』


いくよ、と声をかけて、シュークリームを半分に割る。予想はしていたけれど中からクリームが溢れ出し、なんとか割れた一方を慌てて直樹くんの口に突っ込んで、もう一方を頬張った。


『はは、クリームまみれになってる』
「Aさんのせいですからね」
『あーあー、口の周りにいっぱいカスタードついてる』
「えー、とってください」
『自分でとってよ笑』
「とってほしいです」
『子どもじゃん』
「はは、Aさんもクリームついてるし」
『え、うそ、どこに?』
「とってあげます」
『ちょ、いいよ自分で、』


制止も聞かず、直樹くんの唇は私の口のすぐ横を這った。
唇が触れ合いそうで触れない、そのもどかしい感覚が私を困らせて、こいつはやっぱりずるい男だと思った。




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ぐり - 初めまして!雰囲気が好きですべて一気読みさせてもらいました🥹マユリカ阪本さんのお話読みたいです。時間がありましたらぜひお願いします(^^)v (5月11日 13時) (レス) id: 0e2050f731 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - いつもにやにやしながら読ませて頂いてます! リクエストなのですが、ヤーレンズの出井さんのお話お願いできませんでしょうか??哀さんのペースで大丈夫なのでよろしくお願い致します! (2023年4月22日 22時) (レス) id: 6bae7fb429 (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆん - 哀さん» こちらこそありがとうございました!素敵なお話でした✨ (2023年4月9日 11時) (レス) @page42 id: 4336aaf71d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まゆゆんさん» リクエストをいただいていた多田さんのお話を公開しました。コメントを読み違えてしまい、彼女設定ではありません。申し訳ございません🙇🏻‍♂️リクエストありがとうございました! (2023年4月9日 9時) (レス) id: 8ce96fbb9e (このIDを非表示/違反報告)
P-398(プロフ) - リクエストです!D.Shibaさんの恋人だった主人公が事故で亡くなってしまう話を(死ネタ不可でなければ)お願いします! (2023年3月17日 17時) (レス) id: 2cc94b219c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年5月5日 10時

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