・ ページ14
·
永「話してください、僕に。いつもみたいに」
隣のブランコから、キィ、と軋む音がする。
ブランコとかめちゃくちゃ久しぶり、と呟いて、その人は私の言葉を待った。
『……芸人の、』
永「はい」
『芸人の彼女は、嫌…って、』
永「…はい」
『ちょっと嫌、って、笑顔で、言われて』
永「はい」
『そっかぁ、嫌かぁ、って。そりゃそうよなぁ、とか、思って』
永「うん」
『芸人が彼女なんて、そりゃ…』
喋っているうちに、また涙が込み上げた。
彼女が芸人なんて、恥ずかしいよね、友達に言えないよね、ごめんね。
何も悪くない。
“芸人”は何も悪くない。
でも、どうしても、悔やんでしまった。
永「見る目、ないですね」
『え？』
永「その人も、Aさんも」
ただ、私の目を真っ直ぐに見つめる。
どういう意図が込められているのだろうか。
永「勿体ない」
永見はブランコから降り、また私の前で屈んで目線を合わせる。
永「悲しいですか？」
『…うん』
永「僕は悔しいです」
『え？』
永「多分、僕の言葉じゃ、Aさんの心はそんなに動かないから」
永見が私の左手を取り、指を絡ませて繋ぎとめる。
永「こんな近くにおるのに、こんなん嘘でしょ」
『どういう、こと？』
空いている方の手で、私の涙を拭った。
永「そいつ、今 Aさんが泣いてるなんて一切知らないんですよ、信じられへんでしょ」
私に熱を奪われて、永見の手はだんだん冷たくなっていった。
永「でも、僕は知ってます」
白い息を吐きながら、静かに言葉を紡ぐ。
永「僕は、Aさんが今日をめちゃくちゃ楽しみにしてたこと、Aさんが今日のためにおしゃれしてること、知ってます」
『…何なん、』
永「許せないです、Aさんにこんな顔させる奴」
少し大きく、低くなった声に、怒りがこもっている気がした。
永「もう、こんな思いさせたくない」
そう言って、永見は私の手を強く引いた。
『ちょ、』
永「自分勝手ですけど、ごめんなさい」
全身で、永見の体温を感じる。
永「こんなに、人を守りたいって思ったこと、はじめてです」
その抱擁の強さから、永見の思いの大きさを知った。
『好きなん？』
永「Aさんのこと？」
『うん、まぁ』
永「好き…ちゃうな、大好きです」
耳元で聞こえる優しい声。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 282人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
哀(プロフ) - ミサキさん» こちらのリクエスト作品を続編の方で公開させていただきました！ありがとうございました🙇🏻♂️ (2022年7月2日 10時) (
レス) id: 0fa5c6ec0e (このIDを非表示/違反報告)
ミサキ - 了解です！待ってます！ (2022年4月25日 1時) (レス) id: 1fece32f94 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - ミサキさん» リクエストありがとうございます🙇🏻♂️あと少しでこちらの作品の話数が上限に達してしまうので、続編(？)にはなってしまうかもしれませんが書かせていただきます！ (2022年4月22日 18時) (レス) id: 924204f01f (このIDを非表示/違反報告)
ミサキ - またリクいいですか？スカチャンのヤジマリーさんで、楽屋で飲み物をお互い飲んだら何故か入れ替わってしまって、入れ替わった状態でネタをした。ネタが終わったあと、ヤジマリーさんの相方の宮本さんに説明して、どうしたらいいのか、考えて最終的に戻る話お願いします (2022年4月20日 0時) (レス) id: 1fece32f94 (このIDを非表示/違反報告)
ミサキ - うひゃー！嬉しい！ありがとうございます！ (2022年4月20日 0時) (レス) @page48 id: 1fece32f94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：哀 | 作成日時：2022年1月29日 18時
