光を ページ9
Daigo side.
···
大学を卒業して芸人になり、Aさんと再会した。
漫才劇場所属メンバーを決めるライブにルートロットの名前があり、僕たちもそれに出ていた。
意味は、“根腐れ”。
高校時代、学校帰りに寄ったマクドナルドでAさんに聞いたことがあった。
···
「大吾さん、高三ですよね？」
『うん』
「高三の、七月ですよね？」
『そうやで』
「こんなとこでマックシェイク飲んでる場合ちゃうんとちゃいます？」
『ええねん、夏休みから塾行くし』
「大丈夫なんすか、国語しかできなさそうな見た目して」
『僕一応理系なんやけど』
「え、そうなんすか。知らんかった」
『英語って難しいよね』
「私割と英語は得意なんで…現代文はアレですけど」
『そうなんや、好きな英単語とかあるん？』
僕がそう聞くと、Aさんは困った顔をして俯き、明らかに悩んでいた。
そりゃそうだ。僕だってこんなことを聞かれたらきっと“そういう自分は答えられるのか！”ってポテトを投げつけただろう。
でも、Aさんは優しいので、決してポテトを投げつけたりはしなかった。
Aさんは三分悩んだあと、僕の顔を見てはっきりと言った。
「ルートロットですかね」
『…わからんけどたぶん熟語答えてるやん』
「…あれ？ほんまや、単語ちゃうかった」
『現代文苦手なんがよくわかったわ。どういう意味なん、それ』
「“根腐れ”」
『え？』
「根腐れ、です」
『…Aさんって、病んでるん？』
「いや、意味が好きってわけちゃうくて、ただ…」
Aさんは、鞄からノートを取り出し白紙のページを開いた。
流れるように “root rot” の文字を綴る。
「こんな似たスペルの単語並べてちゃんとした意味になるん、めっちゃおもろいやん、って思って。この熟語自体というよりは、これを作った人のセンスが好きなんです」
『確かに面白いね』
「そうでしょ？！」
あんなに目をきらきらさせて何かを語っているAさんを見るのは、あれが初めてだった。
いつも遠くを見ている様な、目に光の無いAさんを心配に思いつつ、どこか魅力を感じていた。
それと同時に、僕とは違う世界を生きている人だ、となぜか思っていた。
そんなAさんの初めて見る無邪気な姿に胸を熱くした永見少年は、“Aさんの目を輝かせられる人になりたい”という夢を抱き、
そして、“芸人”という道を選んだ。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴの - お返事ありがとうございます！遅くなってしまって申し訳ないです😢えぇほんとですか嬉しいです(T-T)期待しています笑続編も嬉しかったです😢♡これからも更新楽しみにしています☺️頑張ってください！ (2022年2月18日 23時) (
レス) id: 07f35b63aa (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - ぴのさん» 温かいお言葉をありがとうございます( _ _ )！結末についてはお話できませんが、これからも変わらず読み続けていただけると嬉しいです🤍くるまさんメインの作品についても考えてみようとおもいます。今後ともよろしくお願いいたします！ (2022年1月22日 2時) (レス) id: c39e85b81e (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - (続き)いつかくるまくんメインの作品も見てみたいです。これからも更新楽しみにしています。頑張ってください。 (2022年1月15日 0時) (レス) id: 07f35b63aa (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 初めまして。いつも楽しんで拝見しています。作中の芸人さんで特別応援してる方はいなかったのですが、主様が書かれるくるまくんが素敵すぎて令ロのことが好きになりました笑。名前の出順的にくるまくんは報われないのかななんて思い少し悲しいです(TT)笑 (2022年1月15日 0時) (レス) id: 07f35b63aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：哀 | 作成日時：2021年7月23日 16時
