あした世界が終わるなら

予定 ページ12

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漫才劇場で永見さんと並んでソファに座り、ゆっくりと会話を紡ぐ。

永見さんと一緒にいると、心が穏やかになる。


永「夢は叶いそう？」

『夢…あぁ、いや笑 まだ、ですかね』


私の夢というのは、和牛さんと、そして銀シャリさんと、一緒にユニットライブをすることだ。
でも普通に考えて芸歴に差がありすぎるし、到底叶うことはないだろう。


『そういえば、永見さんの芸人としての目標って何なんですか？』

永「あー……M-1グランプリ優勝、かな」

『ありきたりっすねぇ』

永「そんなもんやって」


何かほかに考えていることがあるような気がしたけど、あえて聞かなかった。


永「ねぇ、今度のさ、七日の土曜日って空いてる？」

『ちょっと待ってくださいね…あぁ、空いてますよ』

永「じゃあさ、僕らの単独ライブ、見に来てよ」


永見さんが、優しい笑みで私に言う。


『え、いいんですか？』


ABC準優勝やM-1準決勝進出などが重なって、最近カベポスターさんの人気の上昇は著しい。

私にチケットを売ったりしなくても、簡単に完売するはずだ。


永「うん、Aさんに見てほしくて」

『じゃあ、行かせていただきます』

永「やったぁ。はいこれ、チケット」

『おいくらですか？』

永「ええよええよ、僕が勝手に来てほしいって言って渡してるねんから」

『いやそんな、タダでお笑いの世界に浸るなんて私のプライドが許さないです』

永「いやほんまに、抽選で無料チケットが当たったと思って」

『いやいやいや。二千円ぐらいですか？ちょうど今財布に入ってるんで払います』

永「僕は受け取らへんからね絶対」

『受け取ってください』

永「受け取らへんよ」

『受け取ってください』

永「受け取らへんって…あ！もうそろそろ僕らの出番や！ごめん！」

『あぁ、ちょっと！…ほんっまに…』


永見さんが舞台裏の方へ走っていった。

まだ舞台衣装も着てなかったし、もうそろそろ出番なんて絶対嘘。


『…そこまでして私に単独ライブ見せたいんや』


よっぽど自信があるんだろうな、と思うと、自然と笑みがこぼれた。


どれだけ良いネタを見せてくれるんだろう。




“憧れ”だった永見さんを客席から観る日がくるなんて、思わなかった。


普段あまり使わないカレンダー機能に、予定を入れてみた。



【7日 土曜日 カベポスターさんの単独ライブ】


その文字を見るだけで、楽しみで胸が高鳴った。


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