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俺も力を使って体力落ちてるけど、人間である三人の方が更に消耗してるよね。
らうるが「お腹空いた」ってボヤきながら腹を摩ってるのを見て、膝に手を当てて立ち上がる。
えっと確かこの辺りに……あった。
「佐久間?」
岩に座り込んだあべちゃんが眉を寄せて首を傾げるから、俺は木の側に立って果実を捥ぎ取るとそれを見せて笑った。
「お腹空いてない? これね佐久間が子供の頃食べてたもんなの」
「へえ、食べてみよかな…」
こーじは俺の手の中から果実を取って、上に持ち上げると下から覗く。
見た目は林檎のようなそれ、ちょっとだけ苦味があるけど噛んでるうちに甘味が口の中に広がる。
「……あむっ」
しゃくっと一口噛んで、もぐもぐと味を確かめて「うっ、」と眉間に皺を寄せた。
「康二さんっ!?」
「……ぅ、うっま〜!!らうるも食べてみ!?」
「え、そうなの?」
「最初は苦いんやけどな、なんや後から甘味がぶわ〜ってなんねん!しかも噛みごたえあって腹も膨れんで!ほら阿部も食べや」
らうるに渡した果実、俺はあべちゃんの分を取るとそれをあべちゃんに差し出す。
「ありがとう」
「ん」
なんだろう。
胸の奥がホカホカするんだよなぁ。
「うわっ、ほんとに美味しい!」
「んっ、でも最初のこの苦味は慣れるのに苦労すんな」
「そんでも後からこんなに甘味がくんならええやんか! 終わりよければ全てよしや!」
「にひひひ!」
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さてとと誰かが言えばみんな立ち上がって気合いを入れる。
「腹もいっぱいになったことやし、姫さん助けに行こか!」
「佐久間、一つ聞いて起きたいんだけどいいかな」
あべちゃんは今までのように棘のある聞き方じゃなくなった。
ちゃんと俺の目を見て確認を取る。
「ん、なあに?」
「昔、書物で読んだ事があるんだ。当時はまだ俺も子供だったからあまり詳しく覚えてるわけじゃないけど、その内容は神々が住まう山のずっと奥に鬼の通り道があって、その門を守る巫女様がいたって話だった」
「……うん、それで」
「その巫女様は、代々受継ぐ力で死ぬまでずっとその鬼門を守っていたって。その巫女様の名前が確か、」
「桃玉(とうぎょく)」
「桃?」
「Aさまも、桃繋がりだよね?」
あべちゃん以外の二人は目を見開いて驚き、あべちゃんはほぼ確信を持っているからか表情を変えなかった。
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ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
佐久間推し - お話が面白くて一気に読み進めてしまいました〜!!続きも楽しみです! (2020年11月21日 8時) (レス) id: b5372a6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» ありがとうございます!!お話書かれてるんですね!?よし見に行かねば!! いえいえ彼への愛があれば素晴らしい作品のはずです!一緒に楽しんで書きましょうね(^^) (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» 鬼佐久間さんに是非惚れてください(笑)食べられて良いなんて言っちゃったら、今夜辺りに来ますよ?(笑)まだドキドキシーンがあると思いますが楽しんでほしいです!ありがとうございました! (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年10月24日 1時