短いお話 (ページ7)

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『もしもし？』
「寝てた？」
『ううん、起きてたよ。』

連絡がマメじゃない卓からの電話。
声を聞かなくたってわかる、今の卓の状況。

「なあ、A………俺もうだめかもしれん。」

普段まったく弱みを見せない卓の、しんどいわ、という言葉に胸がギュっと締め付けられた。
でも今日ヒット打ってたね、なんて言葉は何の気休めにもならない。

「大事な時期に怪我してさ、やっと帰ってこれてもこんな成績やと帰ってきた意味ないわ。」

今のチームの状況に責任を感じてないわけがなくて。
側で見てると本当によく頑張ってるのに、それでも頑張るだけでは意味のない世界。

『…このまえドームに試合観に行ったとき、卓の打席で私の周りの人たちすごく応援してた。』

『ここまで頑張ってきたんだから、きっとあともうちょっとだよ。』

わかったようなことは言えないし言いたくない。信じることしか出来ないけど、それでも卓がこうやって寄りかかってくれるなら、どこまでも支えるから。

『卓なら絶対できる。私たちは信じてるよ。』

(『シュークリーム焼いて待ってるから、帰ってきたら食べようね。』)
(「ん、ありがと。」)
(『ご飯は特製オムライスにするね。』)

(あともう少し、一緒にがんばろう。)

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