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ー「花火なんか、なにあれ。一番なに?」ー
テレビの中でアウトドアを一刀両断している彼は、ベッドの上でシーツに包まれながら気持ちよさそうに寝ている。
『ふふ、』
ー「アウトドアの末期ですね。」ー
思い出すのは数年前のこと。
慎吾と付き合い始めてすぐ迎えた夏、札幌で頑張っていた慎吾が鎌ヶ谷に戻ってきた。
悔しさからか、やっぱり少し元気がない慎吾を見て、私は思い切って花火大会に誘うことにした。
『ねぇ慎吾、来週の花火大会行かない?』
「花火大会?」
『ここの有名みたいで、すっごく綺麗なんだって!』
「あ〜〜〜…。」
『、?』
いつもだったら、ええよ!って言ってくれる慎吾なのに、その時ばっかりは何とも言えない顔をしていて、そんな気分じゃなかったかななんて。
「Aは行きたいん?」
『え、うん!浴衣も買ったの!』
「浴衣?」
『そう!しかも慎吾の好きなブルーだよ!』
喜んでくれると思って言っても反応があんまりなくて、あ〜やっぱり元気ないんだなってその時は思ってた。
結局一緒に花火大会に行ってくれることになったけど、当日もやっぱりあまり元気はなくて、
「なぁ、やっぱり帰らん?」
『しんどい?大丈夫?』
こんなこと本当に珍しいから、私もすごく心配して慎吾の顔を覗き込んだ。
「ちゃうねん。浴衣、めっちゃ似合ってるから。誰にも見せたくないやん。」
あの時は心臓が飛び出るほどトキめいたんだけどなあ、
『慎吾のバ〜カ。』
大きな口をあけて寝ている慎吾の鼻をつまめば、眉間に寄る皺。
あの花火大会を境に外でのデートの機会はグンっと減ったけど、家で慎吾とのんびり暇を感じる瞬間が今は何よりも幸せだから。
(「……関西人にバカって言うたらあかんやん。」)
(『起きてたの、?』)
(「目覚めた……でももっかい寝る。ほら、Aも、」)
(『わ、ちょっと引っ張らないで!』)
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作者名:oniononion | 作成日時:2017年6月16日 22時