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「こっち来てもこれだけあるもんな〜。はい、これそっち。これは中島ね。」
日本から遠く離れたこの地でも、たくさんのファンの方が応援にきてくださり、さらに郵便でも差し入れが届く。この時期はバレンタインというイベントがあるから余計に。
そして今私は、先輩と一緒に差し入れを選手ごとにわける作業をしている。
「っし、今日はこんなもんかな?漏れがないかだけ確認お願いな。」
『はい、お疲れ様です。』
腰を押さえた先輩が出ていったのを確認し、私は自分のカバンに手を伸ばす。中には、内緒で用意した赤い包み。
選手と職員の恋愛は御法度だから、直接伝えるつもりはないけれど、差し入れのなかに紛れ込ませたらわからないだろうって、中に『好きです。』のメモまで入れてしまった。
『ふぅ、』
せっかく用意したんだから、と西川選手への差し入れが入った箱へ手を伸ばした瞬間。
「お疲れ様で〜す。」
『っ!に、西川選手っ!』
汗を拭きながら部屋に入ってきた西川選手。思わず手に持った赤い包みを後ろへ隠す。
「俺の差し入れそれすか?もらっていきますね〜。」
ちょうど私の目の前にある箱に西川選手は手を伸ばして、両手でヒョイっと持ち上げた。驚きでバクバクした心臓の音が、西川選手にまで聞こえてしまいそう。
「そや、苗字さん。」
『は、はいっ。』
箱を片手で持ち直した西川選手は、空いたほうの手を私の前に差し出した。
「その、手に持ってるのも俺のですよね?」
『……え、』
どうしよう、そんな思いで見上げた先には、とても真剣な顔をした西川選手。目があってより一層はやくなる私の心臓。
『あ、あのっ、こ「苗字さん、」
言葉が遮られたと思ったら、そこからはスローモーションだった。少し笑みを浮かべた西川選手がゆっくり近づいてきて、さっきまで目の前に差し出されていた手が私の後ろにまわる。
『あっ、』
次の瞬間には、あの赤の包みは西川選手の手の中に収まっていた。
ー「期待していいん?」ー
近づいたときに耳元で聞こえた言葉に状況がつかめない私はパニック。そんな私を見て西川選手は余裕そうに笑ったあと、差し入れを手に出て行ってしまった。
『………いまの、なに。』
西川選手が3本のバラを手に、目の前にあらわれたのはまだもう少し先のお話。
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作者名:oniononion | 作成日時:2017年6月16日 22時