短いお話 (ページ43)

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寝る前の数分、テレビ電話をするのがもはや定番で。卓さんとか毎日連絡するの無理って言うけど、俺は毎日声聞かないとあかんって感じ。

「そっち寒そうやな～。」
『寒いよ～。ほんまこの寒さには慣れる気がしない。』

家の中だからAは薄着やけど、テレビの中の天気予報では、どう考えても寒そう。あの寒さは俺も何年経っても慣れへん。

「こっち暑いくらいやし、帰るん嫌になりそうやわ。」

ほんま何気なく言った一言。それまでテンポよく続いてた会話が一瞬とぎれて、どうしたんかなって画面越しにAの顔をうかがう。

『……かん。』
「え、？」

『…あかんで、ちゃんと帰ってきてや？』

画面越しやけど目が合って、突然のことにその言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。唖然とする俺をよそに、言葉を繋いでいくA。

『もう一ヵ月くらい会ってへんもん。』

『結構寂しい、かも……。』

……いやいや。いやいやいや。かわいすぎやろ。普段わりとクールなタイプやから、こんな姿めっちゃ貴重。録画しときたかったレベル。

『……はるき？』

もしかして引いた？と、言葉を発さない俺を心配そうに見つめる。

「あんま可愛いこと言うん禁止。」
『へ、？』
「今言われても何もできやんもん。」

画面越しでもAが照れたのがよくわかる。

『なんで笑うん…。』
「いや、可愛いなあと思って。」
『な、！絶対バカにしてる！』

数分のつもりが結構時間が経ってることもまあまああって、名残惜しいけどそろそろ切る時間。

「そろそろ寝るわ。」
『ん、明日も頑張ってね。』

なあ、と言えば、その後に続く言葉がわかったのか、いやや！と声をあげるA。

「ええやん、言うてや。」
『絶対いや、』
「Aちゃ～ん？」
『……。』
「おーい、At『もう！わかったから！』

結局毎回こうなることも計算済み。なぜか画面の向こうで座り直すAに口元が緩む。

『………だいす、き。』

一瞬の静寂のあと、めっちゃ小さな声で、しかも言ってすぐ真っ黒になった画面。切るん早すぎ。笑

きっと今頃ベッドの上でのたうち回ってる彼女を想像してニヤける口元もそのまま、俺もベッドに入った。

(7「それあかんってー！！！！！」)

(12「テンション高い。笑」)
(8「楽しそう。笑」)
(9「どうせ彼女に好きとか言われたとやろ。」)
(8 12「「あ～……。」)

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