F 9 ページ38
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『うわ〜〜〜きれ〜〜〜〜!ね、卓もこっち来て!ほら!』
年上とは思えない、そのはしゃぎっぷりに自然と頬が緩む。フェニックスのオフを利用しての弾丸温泉旅行。
「気に入った?」
『うん!忙しいのに、ありがとう。』
窓際に立って、景色を眺めるAを後ろから抱きしめれば、俺のほうに体重をかけてくる。
『あっちにもまだお部屋があるの?』
スルっと俺の腕から抜け出したAが歩いていったほうを追いかける。ドアを開けた瞬間、固まるA。
『こ、これって…。』
「露天風呂。」
大浴場ももちろんあるけど、普段あんまり一緒にいれんけん、風呂のついた部屋を選んだ。ボっと音が出るくらい耳まで真っ赤になったAは、やっぱり年上に見えなくて。
「なん、嫌やった?」
『や、だって、卓、一緒に入れないって。』
「Aとやったら大歓迎。」
相変わらず固まったままのAを、また後ろから抱きしめると、ビクッと肩が揺れて、急に大人しくなった。
「もう全部見たことあるし、今さら照れんでよか。笑」
『ちょっと、そういうこと言わないで…。』
個人的にもチーム的にも苦しかった一年。
いつも隣にいてくれるAにも、きっと負担いっぱいかけたはず。
「夕飯18時半からやけん時間あるし。」
『あ、ちょ、まって。』
後ろから抱きしめたまま、脱衣所に押し込んで片手で扉を閉める。あたふたするAを見て、柄にもなく、幸せかも、なんて心があったかくなった。
(『結局、卓のが照れてたじゃん。笑』)
(「うるさい。そんなことなか。」)
(『かわいいかわいい。卓ちゃんかわいいね?』)
(「おまえ、後でどうなってもしらんからな?」)
(『!!!』)
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作者名:oniononion | 作成日時:2017年6月16日 22時