G 49 ページ37
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「A、ちょっとそっち寄って。」
『え、なに急に、』
一人がけよりも少し大きめの椅子で作業をしていると、ふらっとやってきたうわっちが、腰をかけてきて。さらに肩に腕までまわしてくる。
『ちょっと、だからn「はい撮るよ〜!」
その状態のまま急にインカメラで自撮りをはじめるから、よくわからないままカメラに向かってピースサイン。でもまったくシャッター音がならなくて、画面をみれば10からのカウントダウン。思わず二人とも吹き出して、笑いあったところでシャッターがやっとおりる。
『わ、いい写真!あとで送っといて!』
「りょ。じゃあお邪魔しました〜。」
結局何をしにきたのかわからないうわっちが嵐のように去って行って、作業を再開させようとしたとき、机の上においてあるスマホが着信をしらせる。
『もしもし、慎吾?』
「上沢は?」
『…は?』
私に電話してきたくせに、開口一番のうわっちの所在確認に頭の中はハテナだらけ。
「写真見たで。二人でなにやってるん。」
『写真?』
「肩組んで、えらい楽しそうやなあ。」
少し不機嫌そうなその言葉に、さっきよくわかんないまま撮った写真の話だと、やっと合点がいく。
『なんか急に来て写真撮って、また帰ってったの。』
「二人きりとかじゃないねんな?」
『ちがうよ〜、一人で作業中です。笑』
「…それならええけど。」
ああ、懐かしいなって口角が自然とあがる。慎吾がまだファイターズにいた頃に、こういうことがよくあって。慎吾はなぜかうわっちだけにはヤキモチやくみたい。理由は本当に謎だけど。
『慎吾は?ホテル?』
「いや、いま近ちゃんと剛とおるねん。」
さっきよりもいくらか穏やかになった慎吾の言葉で、うわっちの一連の行動の謎がするする解けていく。
『うわっち寂しいんだね。』
「えぇ?」
『一人離れて寂しい気持ちは、慎吾が一番よく知ってるでしょ?』
電話の向こうで、せやなあ、と慎吾。仲の良かった93年会だから、一人でも欠けたら物足りなくて。
『慎吾、』
「なに?」
『私こそ、寂しさの限界だって、ちゃんと知っててね。』
じゃ、おやすみ。と言い逃げのように電話を切った。
(49「あかん。」)
(8「顔真っ赤じゃん!笑」)
(12「なんだよ惚気んなよ〜。」)
(『うわっち!2人で93年会しよ!』)
(63「さすがA!そうこなくっちゃ!」)
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作者名:oniononion | 作成日時:2017年6月16日 22時