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「苗字、中島について。」
『は、はいっ。』
ここは宮崎。
先輩トレーナーの指示のもと、色んな選手のお手伝いを行なっている。
『剛くんどうしよ〜〜〜。』
「卓さん待ってるから。笑」
『でも、』
「はいはい、いってらっしゃ〜い!」
入社以来、ずっと憧れの中島選手につくことになって焦る私。
それを知ってる剛くんに肩を押されて、中島選手のもとへ送り出される。がんばれ〜って可愛く手を振っている。
『よ、よろしくお願いします。』
「よろしく。」
まずはストレッチから。後ろに回って軽く押したり、身体の状態を見たり。
『もう脇腹は大丈夫ですか、?』
「うん。なんの問題もなか。」
『そ、それはよかったです。』
さっきからあまりの距離の近さに、この心臓の音が中島選手に聞こえてしまうんじゃないかってハラハラ。
今度は前に回って腕を引っ張ってのストレッチ。さらに近づく距離に、ふと顔を上げた中島選手と目があった。
「………剛と仲良いん?」
『え?剛くんですか?』
「さっきも楽しそうにしてたし。仲良いんかなと思って。」
『剛くんとは同い年ですし、去年は鎌ヶ谷でいっぱいお世話になったので…。』
ふぅん、と聞いておきながら興味のなさそうな中島選手の視線が私から離れて地面にうつる。
「鶏すき?」
『とり、?』
脈絡のない中島選手の話に、ポカンとしていると、なんその顔と笑われた。不意打ちの笑顔に、心臓はより一層早く動く。
「地鶏のおいしい店あるけん、もし好きやったら、行くと?」
『す、すきです!いきたいです!!!』
「いや、声でかいわ。笑」
手の甲を口元にあてて笑う中島選手に、恥ずかしくて穴があれば入りたい状態の私。
その時、ストレッチ終了の声がかかって、立ち上がろうとした私の腕を、ぱっとつかむ中島選手。
「ご飯、2人で行くから。」
その言葉の意味をしっかり理解する前に、中島選手は私の横をすり抜けて円陣のほうに走って行った。
(「卓さん、A固まってますけど…。」)
(「知らん。笑」)
(「てか、名前で呼んでるん?」)
(「え?あ、はい、でもたぶん93年会はみんなそうですよ。」)
(「………へぇ、」)
(「(こわ、)」)
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作者名:oniononion | 作成日時:2017年6月16日 22時