F 7 ページ32
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やってもうた、そう思った。
職員の人に呼び出され、何かと思いきや、これ明日の週刊誌に載るから、と。
「何やたったと?」
「週刊誌っす…、」
「Aちゃん?」
黙って頭を横に振ると、少し間があいて卓さんのため息が聞こえた。明日から遠征やけんちゃんと話し合えよ、と俺の肩を叩いてロッカールームを出て行った。
『おかえり〜。』
「ん、ただいま。」
めちゃくちゃ重い足を引きずって家に帰ると、笑顔で出迎えてくれるA。ご飯温めなおすね、というその腕を掴んでソファに腰を下ろす。
『どうしたの?何かあった?』
「………、」
『遥輝…?』
「ごめん。明日、週刊誌に載るらしい。」
『週、刊誌?』
まだよくわかっていない顔のAに、俺はことの全てを説明した。
その日は東京での試合のあと、久しぶりに会う友達と一緒に飯に行った。テンションがあがってめちゃくちゃ呑んで、その後の記憶はほとんど無い。朝起きたら昔すこし遊んだことのある女が横で寝てた。店の前で女の肩を抱いてるところ、タクシーに一緒に乗り込むところが写真に撮られてしまった。
『……そ、っか。』
「ほんま、ごめん。」
「でもほんまに、信じてもらえへんかもやけど、俺が好きなんはAだけやから。」
そうAの手を握って言えば、少し弱々しい笑顔が返ってきた。俺に負担かけやんように、なにかをグッと耐えてる顔。
『話してくれて、ありがとう。遥輝のこと、ちゃんと信じてるから。』
今度こそご飯にするね、と立ち上がろうとするAをもう一度座らせる。ほんまはまだもう少し先で、ちゃんと色々予定してたけど、
『は、るき、』
二人の間に俺が差し出したのは、小さな箱。その中には、何回も何回も見に行って選んだ、Aの指によく似合う指輪。
「絶対幸せにする。」
だから、
「A、俺と結婚してください。」
(「………A、」)
(『だめ!1ヶ月触れるの禁止!』)
(「は!?1ヶ月!?無理無理無理。」)
(『自業自得です。』)
(「うそやん、」)
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作者名:oniononion | 作成日時:2017年6月16日 22時