短いお話 (ページ4)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:120,297 hit

F 7 ページ4

.

札幌ドームの職員として働き始めて2年。

「Aちゃん、おはよー！！！」
『杉谷選手、おはようございます！』

「はよ。」
『中島選手、おはようございます。』

「うっす。」
『中田選手、おはようございます。』

選手出入り口のところで朝一の作業がある私はこうやって選手の皆さんと挨拶を交わすこともあって、

『(き、きた！)』
「Aちゃん、おはよう。今日も頑張ろな。」
『に、西川選手！おはようございます！』

思わず声が上ずってしまって赤面する私の頭をポンポンとしてエレベーターへ歩いて行く西川選手。

『(かっこよすぎる……。)』

挨拶だけじゃなくて、いつも一言かけてくれるその優しさを好きになるのに時間なんかかからなかった。
でも私は職員だからと、一応一線を引いているつもりではある。

『失礼しま～す………、』

ファイターズの選手が載った雑誌をロッカールームへ。練習中のロッカールームには誰もいなくて、急いでラックに雑誌を並べていく。そんな中で目に止まった一冊。

【西川遥輝単独インタビュー。】

『わ、かっこいい………。』
「誰がかっこいいん？」
『西川せn…………

え、？

一瞬で体温があがったのが自分でもわかった。だってこの声は………。
やばいと判断した私は急いで頭を下げる。

『す、すいません！その、ちがうんです！』
「ふはっ、」
『…え？』
「Aちゃん俺のことかっこいいって思ってくれてるんや。」

怒ってると想像していたから、上から聞こえた優しい声に、思わず下げていた頭を上げて西川選手の顔を見た。

「普通に嬉しい。」
『う、うれしい…？』

「そりゃ好きな子にかっこいいって言われたら嬉しいやん。笑」

ん？

私は耳がおかしくなってしまったのでしょうか。なんか今、とんでもないことが聞こえたような…。

「まあそういうことやから、今日終わったら予定空けといてな。」

それだけ言うと、西川選手は練習戻るわと言い残してロッカールームから出て行ってしまった。

『い、いまのなに……、』

(「やりますね、遥輝さん。笑」)
(「は、翔平いつからおったん！？」)
(「ロッカーは公共の場ですから。入らなかっただけ偉いと思ってください。笑」)

.