【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ47)

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47.朽ち縄ページ47

「やあ、久しぶりだねAちゃん。元気だった？」

密集したビルの隙間に生じた、日射しのない空き地。

背後から聞こえてきた下駄の足音に、御国が振り向き様そう言えば『ええ、おかげさまで』と彼女は穏やかに微笑む。

「それは良かった」

『おかげさまついでにみくにくん――その子を降ろして』

御国の技によって首を吊られ、苦悶の表情で藻掻く少年――椿のサブクラスである彼は、今まさに灰にされようとしていた。

「それは聞けないお願いだなあ……コイツはもうオレの獲物だ。壊されたくないなら、Aちゃんが自分で取り返さないと」

微笑み返すように御国が言えば、Aはため息を零して朱色の瞳に妖しい光を灯す。

『つりびなの
　なわもくちれば
　なだとなる』

『しめてくらうは
　おなじことゆゑ』

――シュララララ!!

「！」

唐突に御国のリードであるロープが千切れ、少年と共に地面へ落ちる。

たちまち白い大蛇へ変じたそれは、残る女性の像をガツガツと食らい尽くした。

続いて、角の生えた女の子の人形も。

――ぱくん。

「アベルーーッ!!?」

『言っても仕方ないことなのでしょうけど……あまりうちの子達を虐めないでほしいわ』

顔面蒼白になって絶叫する御国と、銃を乱射するジェジェ。

抵抗も虚しく、襲い来る大蛇の口が二人を一瞬で呑み込んだ。

＊＊＊

「何をやってんだよアンタは…!?」

要望通り水を調達してAの元へ戻った桜哉は、事の経緯を聞いて説教を浴びせた。

妙な言動をすると思っていたら(いつもだが)まさか有栖院御国と接触していただなんて。

露骨に顔を顰めて怒る桜哉に、つい先ほど目を覚ました少年が申し訳なさそうに言う。

「すみませんAさん、俺のせいで……」

『気にしなくていいのよ。桜哉くんは心配してくれてるだけなの』

「心配じゃねーし。反省の色なしか…！」

馴れた手つきで少年の頭を撫でるAには、桜哉の説教に取り合う気がまるで窺えない。

『何にせよ無事で良かったわ。シャムさんには内緒よ？怒られちゃう』

なんて、相変わらず能天気なAに桜哉はガックリと肩を落として諦めることにした。

「にしても、サーヴァンプとイヴ相手にどうしたら無事に済むんだよ…？」

『ふふ、別に？何もしてないわ』

「……」

『私はただ、いるだけ……椿との約束だもの』

そう言って帰り道を歩き始めたAは、どこか嬉しそうに微笑んでいた。