【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ39)

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39.宵の願掛けページ39

「ハイAちゃん、オジサンのお土産」

長らく拠点を留守にしていたヒガンが、久しぶりにホテルへ帰って来た。

『かわい～っ、ありがとうヒガンさん…！』

「たはは、どういたしまして」

可愛らしいぬいぐるみを貰って喜ぶAにヒガンが頬を緩めると、傍でそれを見ていた椿がいつもの調子で笑い出す。

「あはっ！あははは！それヒガンが自分で買ってきたの!? 絶対お店の人に変な目で見られたでしょ！あはははは！」

「いやあ、そうなんだよ。お孫さんに贈り物ですかって訊かれちゃった」

ヒガンの言葉で余計に可笑しくなったのか一層激しくなった笑い声の中、Aはぬいぐるみを抱き締めてご満悦の様子だ。

それを見て椿はすぐにピタリと笑うのをやめると、狐姿になってAの肩に飛び乗る。

「僕のキツネ尻尾の方が、モフモフしてて癒されるでしょ？」

『ひゃっ、椿くすぐったい…！』

２本の尾を器用に操り擽ってくる椿に、Aが肩を竦めた。

「たはは、いいねえ二人とも。青春だねえ」

「オイオイヒガン！ Aには土産買っといてボクらには何もナシかァ～？」

ズルイズルイッ！とゴネ始めたべルキアに、ヒガンは眉尻を下げた。

「ああごめんごめん。代わりというか、美味しい地酒買ってきたから、それで勘弁してほしいな」

「わァーいお酒★ 飲む飲む～」

そんなわけでその夜、部屋で晩酌をする運びとなった椿達。

「Aちゃん意外とイケる口だねぇ……オジサンびっくり」

『ふふふ、私ウワバミの一族だもの』

「ウワバミ～？鬼じゃなくてェ？」

「あはっ、どっちにしてもお酒好きだねえ」

「程々にしておけよA嬢」

「二日酔いは困ります……」

『はいは～い、わかってます』

アルコールでふわふわと心地良い酔いの中、Aはなんだかひどく満ち足りた気分でいた。

泣いてもいいと、気落ちしていたAに胸を貸してくれた椿。

引き寄せる手の優しさが心地よくて、嬉しくて、つい甘えてしまった。

「A？黙ってるけど大丈夫？」

こうして隣にいてくれる椿とその家族達を、Aはとても大切に、愛おしく想う。

願わくば、彼らと過ごすこの時間が、いつまでもいつまでも続きますように――

『ふふ、大丈夫。まだまだ呑むわよーっ』

「ガンガンいくよォ～!!☆」

酔って少しハイになっている大人達はその後、騒がしさに苛立ちを募らせた桜哉からしっかり苦情を受けることになるのだった。