【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ37)

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37.ことづてページ37

「大逆は成された」

ただ依頼された通りの言葉を告げた御国に、それが何を意味するのかは分からない。

けれど受け取り手である彼女――Aはそれを確かに理解できたようで、わずかに表情を曇らせた。

『シースリーの情報力って、本当にすごいのね……この様子だと私のことも、相当調べがついちゃってそう……』

意外と察しが良いのか、御国がＣ３絡みの人間であると早々に当たりをつけたらしい。

「君は地下の怪物を目覚めさせてしまったんだよ」

『怪物…？』

「彼は君を欲しがってる。次は伝言じゃなくて、捕縛になるかもね」

『……』

少し脅かしてみるつもりで告げた情報だったが、顔色を変えないAにはまるで響いていない様子だ。

話術に長けた御国にしては珍しく、言い知れないやりづらさを感じる。

「……さて、お使いも済んだところで… Aちゃん、ちょっと近くでお茶しない？」

『？』

「オレも君に個人的な興味がある。君のことを教えてよ。例えばどうして椿といるのか。もし本意でなく囚われているなら、オレが力になるよ」

実際のところ、彼女は椿の何なのか。

仲間か、下僕か――彼女のスタンス、そのポジションによっては、御国の出方も違ってくる。

「何なら、このまま君を攫ってもいい」

相手の駒を奪って自分の戦力に――御国は将棋よりチェスの方が馴染み深いのだけど。

するとその台詞に、Aはくすくすと面白そうに笑い出した。

『ふふっ、ふふふ… みくにくんたら、お上手ね。とても素敵な口説き文句だけれど……残念、その言葉は1000年ほど前にある人が使い古してしまったわ』

「は…？」

『それに、初対面の人にはついて行かないようにと、キツく言い含められているの』

カン… と狭い路地に下駄の音が響いて、御国の前からAの姿が消えた。

「っ…？」

『――ああそうそう、次は捕縛だというさっきの脅しについて一つ』

頭上から聞こえた声に空を仰げば、ちょうどそこに突き出ていたヒサシを足場にAがこちらを見下ろしていて――どうやらこの場を去るつもりのようだ。

ジェジェに言えばすぐにでも取り押さえられただろうが、御国はそうしなかった。

もともと手荒な真似や深追いをする気がなかったこともあるが……

『できるものならやってごらんなさいな』

そう言って微笑んだAが、穏やかなのに何処か空恐ろしく感じたから。

そのまま屋上へと消えた白い喪服に、御国は思わず安堵の息をついた。