【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ36)

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36.遭遇ページ36

「えっ、散歩…？」

珍しく部屋にAの姿がなかったのでシャムロックに所在を訊ねれば、午前から出掛けているとの答えが返ってきて椿は少し驚いた。

近ごろAが偶に一人で散歩に出ていることは知っていたが、毎度とも昼までには戻っていたのでこれは初めてのことだ。

「いつもなら既に帰っている時間なのですが……」

「どっかで迷子にでもなってたりしてねェ～★」

「困ります……」

「それだったら連絡くらい寄越すだろ」

「ご安心を若！端末のGPS機能で現在地は把握しております！」

「あ、うん… そうだね……」

Aには先日から携帯端末を持たせてある。

最低限電話などは使えるように教えてあるし、あれ以来Ｃ３やよそのサブクラスに妙な動きはないので特に危険もないだろうが……

「僕、ちょっと探しに行ってくるよ」

せっかく起きたのに彼女が傍にいないのは面白くない。

いつも通り遅めの朝食を食べ終えて、椿はAの元へ向かった。

＊＊＊

『そろそろ帰りましょうか』

もうすぐ午前も終わろうという頃。

背の高い建物に挟まれ日射しの遮られた路地裏で、ふとAが呟いた。

あまり戻るのが遅くなるとシャムロックに小言をもらってしまう。

今から帰れば小一時間ほどで椿も起きるだろうかと考えながら、Aは帰り道を歩き出した。

「こんな所を女の子が一人歩きなんて、関心しないなあ」

『？』

不意に背後から投げかけられた声に、ピタリと足を止めて振り返る。

そこに立っていた金髪の青年に首を傾げれば、すぐまた背後に別の気配。

黒装束に身を包み紙袋を３段重ねに被った長身が、金髪の青年とでAを挟み撃ちにした。

「そんなに無防備だと、またいつ吸血鬼に襲われるか分からないよ？」

『……どちら様？』

「オレは御国、世界旅行が趣味のしがない骨董品屋です。そしてソイツはジェジェ、オレのサーヴァンプ」

『……』

オレのサーヴァンプ――つまり彼は所謂〝イヴ〟と呼ばれる存在。

椿以外の真祖もそうだが、こちらへ来てからこうして人間と対面するのは考えてみれば初めてだ。

「警戒しなくても、いきなり攻撃したりしないよ。ただ君と少し話をしてみたいだけだからさ」

『話…？』

「名前くらい教えてほしいなあ～。ねえ、アベルも知りたいよねー？」

持っていた人形の少女へ話を振って、御国は一人で会話を始める。

不思議な子だなぁなんて思いながら、Aは静かにその様子を傍観していた。