【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ4)

今日:9 hit、昨日:7 hit、合計:43,400 hit

04.ヒト喰イページ4

『そういえば……あなたはこの人を殺すつもりだった、のよね……ええと、きゅうけつき？だからもしかして、晩ご飯にする予定だった…？』

相変わらず気絶したままの男に手を伸ばしかけたところで、ふと思い出したように椿を振り返ってAが言う。

『私だいぶ食べちゃったから、今はもう血を吸っても美味しくないと思うのだけど……横取りしてごめんなさい。長いこと食事できなかったからお腹空いてて、つい……えっと、その……』

「――あっは！あはっあはははは！はははははは！ははははははは！あはは！あはははっあはははははっ！あーーーー… ゲホッ！っ、ふふ… ははっ！ははははは！」

焦ったように、本当に申し訳なさそうに狼狽えるAに、椿は笑いが止まらなかった。

人間(Aはその男もまた吸血鬼であることを知らないだろうから)を指して、それを晩ご飯だの食べちゃっただのと何の臆面もなく口にした彼女。

確かにおよそ人間の感性ではあり得ないものだ。

人間ではない何か……そういう存在を、人は主に化物と呼ぶ。

「あははっ！食べちゃったって、もしかしてさっきのアレ食事だったの!? あはははは！ははははははは！」

『ええ、私達は生き物の精気を糧にしているから』

「はははは！っ、そう… そうなんだ？っあはははは！あーーーー…」

っふふ… 面白くない。

『……ねぇ、良かったら私の血をあげましょうか？私達、見た目はこうだけど、血は普通の人間とそう変わらないはずだから』

そう言って椿に向き直り袖を捲ってみせるAは、やはり人間離れしていると言わざるをえない。

吸血鬼を、それにまつわる伝承やら概念やらを知らないからこそでもあるのだろうが……

「いいよ、大丈夫。僕は吸血鬼の中でも少し特殊でね……不死だから吸えなくても平気なんだ」

『そうなの？すごいのねきゅうけつきって……』

感心したように何処か的外れにも聞こえる声を漏らすA。

コンッ… と下駄を鳴らして、椿はそのすぐ目の前まで移動した。

「ねえ、A。君これからどうするの？行く宛がないなら、僕の所においでよ。面倒見てあげる」

『！』

一瞬で間合いを詰めた椿にか、それともその言葉の内容にか――あるいは両方に、Aはとても驚いたらしい。

弾かれるように上を向いた彼女の、困惑に揺れる朱色の瞳を、椿はしっかりと見つめ返した。