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27.反撃 ページ27

「どォもどォも! 喝采をどォも!」

『私より、べルキアの方がよっぽどやんちゃだと思うのだけど……』


一切の情け容赦なく、派手に敵を倒していくべルキアを見てAが独りごちた。

すぐに済ませるという椿の言葉に従い大人しく庇われることにしたものの、どうにも手持ち無沙汰である。


『それにしても、吸血鬼って本当に死ぬと灰になるのね……不思議』


サラサラと指の隙間から手に掬った灰を零すAは、目の前で繰り広げられる椿達の殺戮行為にも怯えた様子はなく、やけに落ち着いている。

すると舞い上がった灰から、何か雪のようなものが現れて漂うのに、Aは首を傾げた。


『あら……ねぇ桜哉くん、これってなぁに?』

「ああ…!? ああ、ジンだよジン! 灰に塵って書くの!」

『ジン… 灰塵ね。ふふ、可愛い……』


キュー、と鳴くそれらには顔のようなものまで見受けられ、Aは手元へ集まってきたのを指先で擽るようにして笑った。


「ん…? つーかお前、ジンが見えんの?」

『?』

「吸血鬼かイヴになった人間にしか見えねーんだぜ、普通は」

『そうなの? あるのに見えないなんて、不思議ねぇ……』


なんて話していると、少し離れた所で敵を葬りつつその様子を視界の端に捉えていた椿が、やや呆れたような咎めるような視線を二人へ送った。


「ちょっと、この状況で何ユルい空気を醸してるの…? 桜哉まで……」


戦況に余裕があるのを見てか、桜哉は既に武器を下ろしてAの話し相手になっている。


『ふふふ、だって椿が来てくれたから安心しちゃったんだもの』


ふわり、と本当に安心しきったような笑顔と共にそう答えるAに、椿は途端ピタリと動きを止めて僅かに目を見張った。

急に心臓の動きが激しくなるのを感じて、困惑する。


「お前そういうのよく素で言えるな」

『そういうの…?』

「……能天気」


ドクドクと胸の内から響くような鼓動の中で呆けたように突っ立っている椿に、再び桜哉と話しはじめたAはその様子に気付いていない。

無防備な椿を敵が放っておくはずもなく、背後から武器を振り上げ襲い掛かるのをべルキアが捩じ伏せた。


「オラァッ…! つばきゅんたら、油断大敵だよォ★」

「若…?」

「余所見は困ります……」

「……あはっ、ごめんごめん」


べルキア達の声でようやく我に返った椿は、改めて刀をしっかり握り直すと、戸惑いを振り払うように残る敵へまた一歩踏み込んだ。

28.噂噺≒法螺話→←26.天気雨



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作者名:きー | 作成日時:2017年5月8日 3時

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