【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ25)

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25.奇襲ページ25

『……身に覚えがないわ』

「とぼけんなよ、てめぇがやったんだろ？俺らの同胞達を……」

悔しそうに言う男はどうも本気でそう思っているようで、話が通じるようには見えない。

その言い草から相手が誰かしらのサブクラスであることを悟った桜哉は、すぐにAを後方へ押しやった。

「妙な言い掛かりつけてんじゃねぇぞ……どうせＣ３にでも捕まったんだろ」

「突っかかられても困ります……」

反論するもやはり相手は聞く耳持たずで、Aを引き渡せと言ってくる。

どう見ても示談で済ませる気には思えないその要求を断れば、男が合図すると同時に周りの連中共々、一斉に三人へ襲い掛かってきた。

「クソ…っ、キリがねぇ…！」

立て続けに攻撃してくる敵を捌きながら、一向に終わりの見えない状況に桜哉が顔を顰めた。

吸血鬼は不死身である上、多少の傷なら放っておいても回復する。

これだけ数が多いと数人倒したところで、他を相手しているうちに起き上がってくるのだ。

オトギリもいつも通り糸で敵を操って相打ちさせるなんて効率の良い仕事ぶりではあるのだが、やはり二人だけで捌き切れるものではない。

「A！椿さんに電話して応援頼め…！」

背後に庇っているAへ桜哉が端末を投げ渡して言えば、彼女は驚いたように慌てて手を伸ばしてそれを受け取った。

『え、っ…！えっ、と…………桜哉くん、これなぁに？』

「あああ…!? そうだったお前わかんねーのか!?」

板状の電子端末を手のひらに乗せて『でんわ…？』と首を傾げるAに桜哉は絶叫した。

「オトギリも手塞がってるし…！」

また一人かかってきた敵を牽制しながら嘆く桜哉に、狙われている張本人であるはずのAは緊迫感の欠片もなく『あらあら』なんて能天気に零して。

それから言った。

『……じゃあ、こうしましょう桜哉くん』

カン… とまるで椿がするみたいに、下駄の踏み鳴らされる音が背後からやけに大きく聞こえてきて、疑問に思った桜哉はそちらを振り向こうとする。

「？なに…」

けれどその前に、ガヅン！と牽制していた敵の顔面へ、女物の華奢な下駄を履いたAの足が叩き込まれた。

『私と交代』

「な…」

踏み台にするかのように敵の上に身を屈めて立つAは、ぽとりと桜哉の手元へ端末を落として返す。

そのまま敵の中へ飛び込み慣れた様子で捌きはじめた彼女の後ろ姿に、桜哉は呆気にとられて「マジかよ……」と口元を引き攣らせた。