【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ22)

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22.花食みページ22

「おはようA嬢」

『おはようございます、シャムさん』

Aが吸血鬼たちと現代を暮らしはじめて、およそ一週間が経った。

生活の変化にも慣れてきた今日この頃、変わったことが一つ。

「食事の用意はできているが、今朝はどうする？」

『ふふ、いつもありがとう。いただきます』

ここ最近、シャムロックはAに対してやけに献身的というか、過保護というか……扱いだけ見れば椿とほぼ同じレベルで世話を焼いてくるようになった。

恐らくはAのズレた発言や能天気さが要因なのだろう、彼には〝気をつけて面倒みてやらないと死ぬ〟自活力のない小動物みたいな認識をされているらしい。

『……えっと、シャムさん』

「なんだ？ A嬢」

『あの… そんなに見られていると少し食べづらい、わ…？』

「俺のことは気にするな」

『……』

給仕用ワゴンいっぱいに盛られた、赤い薔薇の花。

ガクのすぐ下へハサミが入り手入れされたそれを、Aは手のひらに乗る分だけ掬い取って花びらに口付ける。

はらはらと、萎れたそれが零れるように散って宙を舞い落ち、Aの膝に着く前に空気中で霧散した。

どうもシャムロックはこの光景をいたく気に入っているようで、Aが花を食べる時は傍に控えて見ていることが多い。

邪魔をされるわけでなし、気にするなと言われれば確かにそれで済む話なのだが、ただ食事をするのにここまで食いつかれると正直やりづらい。

「あれェ～、シャムまァたAの食事鑑賞してんのォ？シュミ悪いからヤメたげなよォ～」

辟易した表情で現れたべルキアが、Aの隣へ腰掛けるとソファの上にも関わらず胡座をかく。

「ホラAも～、イヤならイヤって思ったこと言っちゃいなァ？」

『え、と……嫌というか、どうしてこうなったのかしらって感じ…――あの、べルキアっ？これ以上盛らないで、一度にこんな食べられない…！』

喋っている間にワゴンから花を掴み取ってどんどん手のひらに乗せてくるべルキアに、Aは慌てて制止の声をかけた。

「エエ～？ホントAは食が細いんだからァ……もっと食えよォほらほらァ～★」

『お、落としちゃうったら…っ』

「あははァ！そ～れッ☆」

「A嬢で遊ぶなべルキア！」

焦るAにシャムロックが声を荒らげたちょうどその時、べルキアが放り上げた薔薇の花が見事に空中でバラけて紙吹雪のように３人の周りを舞った。