【SERVAMP】鬼の白絹【憂鬱】 (ページ12)

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12.初めてのページ12

オトギリに付いて外を歩くAは、なんだか小さい子供みたいだった。

すれ違いに目に入る全てが目新しいようで、油断しているとすぐに隣からいなくなる。

「A」

『あ、おとぎり… ごめんなさい、可愛かったからつい……』

「気になるなら、帰りにゆっくり見ましょう」

雑貨店のぬいぐるみに目を惹かれて立ち止まったのを諭して、迷子になられては困ると逸れないように手を繋いだ。

そうして向かった近隣の大型デパート。出掛けに椿から言われたこともあって、まずは服から見繕うことにした。

「どれにするか決まった？」

『そう、ね……あれにしようかしら』

恐らく着物の方が慣れているのだろうと連れて行った店で、たくさん展示された和服の中から、Aが指差したのは白い喪服。
この時代の着物はどれも柄が賑やかで、落ち着かないらしい。

あれを普段使いにするのは変かと訊かれて、オトギリは考える。

変、と言うなら日頃からナース服を着ている自分もそうだろうが、吸血鬼であり特別社会に馴染む必要性もないから気にならなかった。
それはAにも当てはまりそうだし、むしろ……

「いいと思うわ……Aに似合いそう」

『なら良かった』

とりあえずそれを着て帰ることにして、Aを試着室で着替えさせる。
他にも着替えに何組か同じような白い喪服を選んで、荷物にならないようホテルへ送ってもらうことにした。

「そろそろお昼ご飯にしましょう」

何にでも興味を示すAとの買い物は昼時まで続き、オトギリ達は食事のためにデパートを離れた。
入った店でもまた珍しそうに周りを眺めていたAは、やがて目の前に運ばれてきた料理を見て首を傾げる。

『おとぎり、これは？』

「おそば」

『おそば……不思議ねぇ』

これもどうやら初めて見るようで、Aはオトギリの見様見真似で美味しそうに蕎麦を食べはじめた。

『……ふふふっ』

「どうしたの…？」

『なんだか楽しいなって』

首を傾げるオトギリに、箸をとめたAが言葉通り楽しそうに穏やかな笑顔を浮かべる。

『私、友達とこうしてご飯食べるの初めて』

「ともだち……」

『ええ、……おとぎりは、私と友達はいや？そんなのは、困る？』

眉尻を下げてそう問いかけてくるAは、微笑みを浮かべる一方どうにも寂しそうで。

「困りません」

私も、Aと友達になりたいわ。

思わず口をつくままにそう言うと、Aは『良かった』と嬉しそうに微笑んだ。