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名を呼ぶ ページ8

「Aー、風呂さ入ったかーい?」



台所で食器を洗っていると茶の間からお婆ちゃんがのんびりした声をあげる。



「入ったー。お湯湧いてるよー」


「そーかい、ありがとお」



お爺ちゃんは食事が済むと部屋に篭ってしまった。


私もうかうかしていられない。


お爺ちゃんより早く本を見つけて、ああでも試験勉強が。


ううん、頭が痛い。


お婆ちゃんはお風呂へ行ったみたいで、洗い物が終わって茶の間に顔を出したら誰も居なかった。


小さく息を吐く。




早足になってしまう足を自覚しながら自室に戻ると少年が居ない。


一体何処へ。



「じぇ……じぇ、ぼむ?」



んん?はて、“じぇぼむ”とは?


自らの口から出た単語が理解できない。


あの少年を想って部屋を見回していたところ、突然浮かんできた言葉だ。


思わず口に出してしまった。



「此処にいるぞ」


「……っ、びっくりした」



振り返ると、私のリュックを枕にして寝転がっている。


目も閉じられていて、眠いのだろうかと首をかしげた。


しかし、この真冬に甚平姿は見ているだけで寒い。



「あ、そういえばお腹減らない?」



問かければちろっと目を向け、手招きをされる。


素直に支持に従った。


なんだろ?と傍に寄れば手首を取られた。


不意打ちの事で呆気なく「うわ!」と倒れ少年を下敷きにしてしまう。



「ごっ、ごめん!」と、急いで腕立て伏せの如く腕を突っ張ったが、少年は慈しむような優しい微笑みを浮かべながら私の乾燥してカサカサの頬を指先で撫でた。


いきなりの状況に戸惑う。


さっさと退けば良い話なのだがどうにも身体が言うことを聞かない。


視線だけが少年を直視出来ずに迷子になった。


思わず畳の隙間に指先が食い込む。


突っ張った腕もふるふるしてきた。


何より、変な空気感に耐えられない。



「ひっ」



世界がくるりと回り、小さく悲鳴が出た。



その瞬間には少年と私の位置が逆転していて自室の天井と、今度は悪巧みでもしているようニヤついた顔の少年が視界に入った。


腕は畳に固定され些か不本意な体制だと思う。



「Aに触れれば、俺の空腹は満ちる」



少年の眼光が強く、到底子供には見えない。


それに、畳に縫いつけられた手首がピリピリと微弱な刺激にビクついている。



「はあ、どういう事」



不安になりながら見上げると「分からせてやる」と少年の顔が近付いて来た。

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かん(プロフ) - 投稿されるの楽しみに待ってます\^^/ (2015年11月23日 11時) (レス) id: 77ee2827c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山田 | 作成日時:2015年10月6日 2時

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