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衰える力 ページ6

「大変な事になったぞ!」



私の足の上に座って退かない鬼を膝に乗せたまま勉強していた所、二階まで届く声でお爺ちゃんの帰還を知る。


そしてハッとした。


まるで親戚の叔父ちゃんが構うように少年を扱っていた事。


和やかに勉強している訳にはいかない。


お爺ちゃんに報告しないと。


思わず心配そうに見下ろしてしまう。


鬼は無害な少年の姿で、意思の強そうな瞳で私を見返す。


この子は、お爺ちゃんに報告してしまったら消されるのだろうか?



「何を不安そうにしている」



トンと少年の頭が肩口に寄り掛かった。


柔らかな黒髪が擽ったい。


思わずその艷やかな黒を撫で付けた。


小さく張り出た角が見える。



「うーん、少し気配を消す事は出来るかな」


「造作もない。しかしまた何でだ」



少年は少年らしからぬ落ち着いた雰囲気と口調で冷静に言葉を交わす。



「……何でかねぇ」



妖怪は滅するべき。


それが決まり事。


小さい頃からの教えに何ら疑問も感じず、ただ生きるために空気を吸い吐き出すが如く当たり前に無意識に根付いた思想。


結局呼び名も決まっていない鬼の少年は物言いたげな視線を寄越してから口を開く。



「心配するな。既に気配など消している」


「そっか、ちょっと此処で待ってて」


「わかった」



少年は私の膝から降り、畳に胡座をかいた。


甚平姿も相俟って渋みがある。


私より年上のような風格だ。


たぶん恐らく、私より長い年月を生きているとは思うが。




大人しく言うことを聞く鬼を一瞥し、自室を出て一階へ。


茶の間に行くとお爺ちゃんが難しい顔をして、お婆ちゃんが穏やかに夕食の支度をしている光景があった。


私はいそいそと炬燵に入り冷えた身体を温める。



「お爺ちゃん、何かあった?」


「それがなぁ」



お爺ちゃんは生きてきた年輪を刻み込んだ顔を私に近付け深刻そうに話し出した。


鬼のことは言わない事にした。


それが危ない事だとしても、あの子の存在を知らせるのは気が進まなかったのだ。



「鬼の封印が解けた」



骨と皮だけで出来たような首がぬっと伸びる。


目を見開き微かに震えるその人の表情が何より如実に事の重大さを教えていた。


視線がブレる。


まさか、よりにもよって既に勘付かれているではないか。


やはり、言ってしまった方がいいのか。



「鬼って、そんなに凶悪なの?」



耳元で心臓が鼓動しているように煩い。


緊張と動揺に塗れている。

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かん(プロフ) - 投稿されるの楽しみに待ってます\^^/ (2015年11月23日 11時) (レス) id: 77ee2827c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:山田 | 作成日時:2015年10月6日 2時

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