最後の時 (ページ32)

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「いきなり、どう、したの」

どもる。

でも狼狽しながらちゃんと話しあう姿勢を取っているのだから、私は表彰されても良いと思う。

誰が表彰してくれる訳でもないけど、そのくらい振り絞っているから。色々と。

視線は廊下の床に落とす。

直視できない。

すると縫い付けられていた手を引かれた衝撃でジェボムの身体に寄り掛かってしまった。

動揺も緊張も最高潮。

誰か助けて。色んな意味で死んじゃう。

「A」

ぎゅうっと抱き締められ唖然。

もう頭の中は真っ白。

思考回路がショート寸前……ううんショートしてる。

身長が伸びたジェボムは私を抱きこむようにぎゅうぎゅうと抱き締める。

なんだか、段々と大きな子供にでも縋られている気分になって来た。

頭も冷えてくると、いつまでも私を抱きしめている鬼の背をぽんぽんと叩きあやしていた。

「どーしたの？」

非常に、大変予想外だけど、私の心は穏やかになった。

肩口に顔を埋め、ぐりぐりと押し付けてくるジェボム。

「可愛い」

思わず笑ってしまうとガバッと顔が上がり、鼻先がくっ付きそうな程近くでじっとり睨まれた。何で！

「可愛いのはAだ」

「……。なんで怒ってるの」

「毎日毎日生殺し状態だ」

「？意味が分からないよ」

鬼はスッと目を細めたかと思うと私の着ていた服の襟元をぐっと引っ張った。

「え、な」とテンパっていれば激しい痛みが首元に走る。