最後の時 (ページ29)

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「どうして成長したの？」

「やっと元の姿に戻れるだけ力が備わったんた」

「……はあ」

ジェボムは、今でも私の魂の供給を欠かさない。

つまり胡散臭い「契約」とやらは継続中である。

この一週間で分かった事は、私の「力」とは「魂そのもの」の事。

ジェボムという鬼を前世かどこかで私は使役し、飼っているような状態である事。

そして、鬼は人を喰らうという事実はこのような形で事実、真であった事。

ただ、あの晩、ジェボムが契約を破棄するよう強引な口調で諭した理由は分からないまま。

「なんだか、今更何が起こっても受け入れられちゃうな」

「Aの順応性は目を見張る」

「たぶんジェボムも要因だけれど、ね」

成長してしまったジェボムがきょとんと首を傾げる。

可笑しいじゃないか。

私は、本当にどうかしている。

一夜にして少年が成長した。

まあ妖怪に人間の理屈だの倫理だのを当て嵌める事自体可笑しいのかもしれない。

だが、今現在問題なのはそんな事ではない。

「A」

「な、に」

頬を撫でる冷たい指先。やめてほしい。

「力を貰って良いか」

「今更了承が居る？」

ジェボムが体勢を変える。

横たわる私を真下に見て、目を細める。

カーテンからぼんやり差し込む光が遮られた。