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「どういう事だ?Aがもう一人出来るという事か?」
「そうだねえ。クローンっていうんだけど、自分とまったく同じ人間を卵の状態から作り出すの」
「そんな事が出来るのか」
ジェボムは真剣な顔をしている。
「出来るらしいよ。禁止されてるけど」
「そうか。それはとても……」
「うん?」
少年は私の手を引いて歩き出す。
少し前を歩いているので表情は伺えないが元気溌剌といった風でも無い。
「お前の身体が何個も出来たとして、一番元のA以外の精神はAなのか?」
少年は科学者のように考えを尽き詰めているようだ。
「それは分からないなあ。そもそも精神をどういう定義で決めているんだろう」
「そんなのは知らん。けど、そんな事は俺にはただ恐ろしいと感じるだけだ」
「恐ろしい?人類の大発明だよ?英知の結晶」
「ああ、人間は恐ろしい生き物だ」
この世で一番恐ろしいと鬼は言う。
人間であり一般人である私はそんな恐ろしいらしい発明なんか出来やしない。
凡才。
クローンどうのと話しているが、きっとその事象に関してこれっぽっちも理解などしていない。
分かった気でいるだけ。
それがどのようにこの世界に影響を及ぼすのか、何百年後か経った時にその事象がどういう結果を生み出しているのか。
私は何もわかっちゃいない。
「神というのは元来」
ジェボムは静かに言葉を紡いだ。
「人間そのものを言うんだろうな」
「それは言い過ぎだと思うけど。だって、そんな事を言ったら……」
「神」という厳かで壮大な、人知を超えた絶対的創造主とも言えるニュアンスが崩壊してしまわない?
「ある固定された観念や思想を持つ事は、それだけで既に特定の“神”の思惑通りかもしれないな」
鬼は分かっているのか、分かっていないのか。
世界の真理を垣間見せる。
私は凡人なので、そんな事はわからない。
私はただの人間である。
だがしかし、けれども私は……、
「人間って気持ち悪いね」
「ああ、気持ち悪いさ」
ジェボムの言いたい事が少しだけ分かった気がした。
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かん(プロフ) - 投稿されるの楽しみに待ってます\^^/ (2015年11月23日 11時) (レス) id: 77ee2827c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山田 | 作成日時:2015年10月6日 2時