最後の時 (ページ3)

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影に潜むページ3

朝、来た道を逆戻りして全身雪まみれにしながら家路に着いた。

段々雪の降る量が増している気がした。

広い庭、大きな瓦屋根の日本家屋。

昔ながらの威風堂々たるそれ。

大学に近いので、現在居候中であるお父さんの実家。

「ただいま」

居間に上がるとお婆ちゃんが台所から出てきた。

頭巾を被りながら包丁を持っている。

ヒッと一瞬うろたえた。

「おかえりぃ、A」

「ただいま。お爺ちゃんいる？」

「あぁ、夜まで帰らんよ」

「そっか、ありがと」

お婆ちゃんはまた台所に腰を叩きながら入っていった。

夕飯作りも手伝いたい所だが、とりあえずホッとする時間が欲しい。

お爺ちゃんに怒られるのが先延ばしできただけなのだが、風呂でも入って待とうかな。

と、お婆ちゃんに「お風呂洗ってくるー」と声をかけて風呂場へ。

足腰の弱いお爺ちゃんお婆ちゃんの為、風呂掃除は率先して引き受けている。

ただでさえ居候の身であるからして、このくらい恩を返さねばと気合を入れた。

一通り湯船をゴシゴシ洗って、湯を張る。

そのまま自分も入ってしまおうと脱衣所で服を脱いだ。

足の裏も素肌も寒い。

はやくお湯よ、溜まってくれと願いながらシャワーを出す。

「随分といい匂いだ」

「……え？」

今何か、誰か言ったか。

風呂場を見回すが浴槽に流れ込む水音と、身体に掛けているシャーの音以外特に聞こえない。

それに、私以外いるはずもなかった。

何か変なものの気配も感じない。

気のせいだったかな。

そう思って身体をさっさと洗った。

洗い終わる頃には湯船が溜まっていて、それに身体を沈めるとキュウッと身体の芯が縮まるような感覚に陥った。