8. ページ27
痛みもおさまり、漸く立ち上がると俺は異形の左腕を引きずって歩き始めた。厚紙の上に手を滑らせるような音がたまらなく不快で、俺は舌打ちをする。
これがどんな音だったとしても、不快だと感じたかもしれない。
「……何処まで続いてんだ?」
道は途切れることなく続いている。
周りのものが変わらないせいで、かなりの距離を歩いたようにも感じるし、同じ場所にいるようにも感じる。
もしかしたら、迷っているのかもしれない。
一本道を歩いているはずなのに、本当に迷い込んだような気持ちになる。
ここに囚われた人間たちは不安や恐怖でいっぱいだっただろうなと他人事のように考えながら、進んでいくと何かにつまづいた。
「うぉあっ!」
奇妙な声を上げて、転けた。
顔面をかばおうとして、思い切り地面に叩きつけた左腕が電気を流したように痺れている。
「んだよ……」
危ねぇな、と呟いて拾い上げたのは真っ白な本だった。表紙にはメタリックブルーで「白薔薇」と印字されているが、作者名はどこを見ても見つからない。
中に書いてあるのかと開いてみると、一番最初のページに柔和な笑みを浮かべる男の写真があった。その下には「White rose−Original」と黒いインクで印刷されている。
「……男だったのかよ」
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作者名:さっく。 | 作成日時:2019年4月22日 16時